研究領域 | 統合的神経機能の制御を標的とした糖鎖の作動原理解明 |
研究課題/領域番号 |
26110723
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
木塚 康彦 独立行政法人理化学研究所, 疾患糖鎖研究チーム, 基礎科学特別研究員 (20564743)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 糖鎖 / 糖鎖遺伝子 / エピジェネティクス / 糖転移酵素 / 糖鎖生物学 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、「神経科学」と「糖鎖生物学」の複合領域にさらに「エピゲノム」というピースを融合させ、神経系に特異的に発現する機能糖鎖群がなぜ神経特異的に発現しうるのか、また神経疾患が発症していく過程でどの糖鎖がどのような機構で発現異常を来していくのか、その2点を明らかにすることである。そのアプローチとして、①神経糖鎖が神経特異的たりうるメカニズム(基礎的知見の拡充)と、②神経疾患の発症に伴う糖鎖の発現異常メカニズム(新たな疾患メカニズム)、の2点を中心に進める。 平成26年度では、ほぼ全ての糖転移酵素(150種)のmRNA量を定量解析する系を立ち上げ、マウス初代培養ニューロン、アストロサイトなどをエピゲノム試薬で処理した際にどのように糖転移酵素mRNAの発現量が変化するかを解析した。さらにmiRNAの生合成系因子のノックダウンの系をこれまでに確立した。同時に、これらエピゲノム因子の変化が起きた細胞におけるN型糖鎖プロファイルの変化を質量分析を用いて作製した。これらの成果は、第87回日本生化学会大会とSFG & JSCR 2014 Joint Annual Meetingで発表した。また疾患モデルとして、アルツハイマー病のモデルマウスの搬入飼育と病態解析を行った。今後さらにてんかん、多発性硬化症のモデルマウスの系を確立する予定である。これらモデルの脳における糖転移酵素の発現、糖鎖の発現プロファイルを作製し、正常マウスと比較してどのような糖鎖合成経路が疾患と関連するか明らかにする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までに、ほぼ全ての糖転移酵素遺伝子のmRNA発現量の定量法が確立できた。実際この系を使って初代培養ニューロンやアストロサイトに発現する糖転移酵素のプロファイル作製が完了した。また質量分析によって、細胞が発現するメジャーなN型糖鎖の構造プロファイルの作製法を確立した。これら、本研究課題の遂行に必須な分析系の確立が概ね完了している。 一方で、疾患モデルマウスの確立は完了しておらず、平成27年度に行いたい。これらのモデル動物と解析系を使い、新たな糖鎖発現メカニズムを明らかにし、論文をまとめる形にしたい。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、確立した系を用いて、神経細胞、グリア細胞、非神経系細胞での糖転移酵素プロファイル、糖鎖プロファイル、またこれらプロファイルのエピゲノム試薬投与による変化を比較解析することで、エピゲノム因子によって発現制御される神経特異的糖鎖とその生合成酵素を同定する。 また、神経疾患モデルマウスより脳を摘出し、同様に糖転移酵素mRNAのプロファイル、糖鎖プロファイルを作製する。これらのプロファイルをコントロールマウスと比較し、疾患の発症・進行に伴う糖鎖の同定とその変動経路を明らかにしていく。さらにこれら糖鎖の発現を制御するエピゲノムメカニズムを培養細胞系で解析する。
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