研究領域 | 統合的神経機能の制御を標的とした糖鎖の作動原理解明 |
研究課題/領域番号 |
26110726
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研究機関 | 公益財団法人東京都医学総合研究所 |
研究代表者 |
神村 圭亮 公益財団法人東京都医学総合研究所, 脳発達・神経再生研究分野, 主席研究員 (30529524)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ヘパラン硫酸 / プロテオグリカン / シナプス可塑性 / ショウジョウバエ / 神経筋接合部 |
研究実績の概要 |
ヘパラン硫酸プロテオグリカン(HSPG)はコア蛋白質にヘパラン硫酸(HS)鎖が共有結合した分子であり、細胞膜表面や細胞外基質に局在する。これまでの研究からHSPGは様々な分子と相互作用することで多くの生物学的現象に関与することが知られている。HSPGがこのような多彩な機能を示す一つの要因はHS鎖が複数の糖鎖修飾酵素によって形成された多様な微細構造を持つためだと考えられている。実際にFGF等の幾つかの分子が異なるHS微細構造に結合することが生化学的実験により示されている。しかしながら、生体内におけるHSPG及びHS微細構造の作用機構については未だに多くの点が不明である。本研究では生体内におけるHSPG及びHS微細構造の役割を明らかにするため、遺伝学的手法に優れたショウジョウバエを用いて研究を行った。特にシナプス可塑性におけるHSPGの役割に注目し解析を行った。 ショウジョウバエにおいては、飢餓時にオクトパミンを介して運動量が増加し、神経筋接合部におけるシナプス終末の数が増加することが知られている。そこで、飢餓がHSPGの局在にどの様な影響を及ぼすのか解析した。その結果、飢餓によりシナプスにおけるグリピカンの発現レベルが変化することが明らかになった。次にグリピカン及びヘパラン硫酸の修飾酵素が飢餓依存的なシナプス終末の形成に必要かどうかを調べた。その結果、グリピカン及びヘパラン硫酸 6-O脱硫酸化酵素であるSulf1の機能をノックダウンした個体では飢餓依存的なシナプス終末の増加が抑制されることが分かった。以上の結果から、グリピカンは飢餓によって発現レベルが変化することでシナプスの可塑的な形態変化を調節すること、またヘパラン硫酸の6-O硫酸基という特定の糖鎖修飾が重要な役割を果たすことが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書に記載した「研究目的」の最も重要な点は、シナプス可塑性に関与するヘパラン硫酸プロテオグリカンのコア蛋白質とヘパラン硫酸修飾酵素を同定することである。我々は飢餓により発現が変化するHSPGコア蛋白質を調べた結果、シナプス後部においてグリピカンの発現レベルが変化することが分かった。また様々なHSPG遺伝子群の欠失変異体及びRNAi系統を用いて運動能及びシナプス終末の形態を観察した結果、グリピカン及びヘパラン硫酸 6-O脱硫酸化酵素であるSulf1の機能をノックダウンした個体では飢餓依存的な運動能の増加及びシナプス終末の増加が抑制されることが分かった。以上のことから、シナプス可塑性に関与するコア蛋白質とヘパラン硫酸修飾酵素を同定することが出来た。また、グリピカン及びSulf1の異常がグルタミン酸受容体の局在に影響することを見出しており、HSPGがシナプス伝達において重要な役割をすることが分かりつつある。一方、飢餓によるグリピカンの発現変化が神経活動に依存するものか、それとも飢餓特有に観察されるものかは不明であり、今後明らかにしていく必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
飢餓によるシナプスの変化は、ストレス等、運動以外の別の要因によって引き起こされる可能性も考えられる。そこで運動神経細胞の神経活動を直接活性化するため、緑藻由来の光感受性イオンチャネルであるチャネルロドプシンをGal4/UASシステムを用いて運動神経細胞において特異的に強制発現し、光刺激を行う。このような光遺伝学的手法によって誘導されるシナプス終末の増加がどのHSPGコアタンパク質及びHSの微細構造に依存するのか調べる。これにより、シナプスの可塑的な形態変化に必要なHSPGコア蛋白質及びHSの微細構造を同定する。 次にHSPGがどの様な分子と相互作用することでシナプスの可塑的な変化に関与するのか調べる。これまでWntやAMPA型グルタミン酸受容体等の様々な分子が神経活動に依存して局在が変化し、シナプスの可塑的な形態変化を調節することが報告されている。そこでHSPGがHSの微細構造を介してこれらの分子の局在を調節する可能性を調べる。方法としてHSPGコア蛋白質及びHS修飾酵素欠失変異体を用い、Wnt等の神経活動依存的なヘパリン結合性分子の局在変化がどのHSPGコア蛋白質及びHS微細構造に依存するのか免疫組織化学染色法により調べる。また、これらのヘパリン結合性分子とHSPGや既に構造が分かっているHSとの直接的な相互作用をBiacoreシステムを用いて調べる。以上の実験から、HSPG及びHSの微細構造がどの様な分子と相互作用することでシナプスの可塑性を調節するかが明らかになる。
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備考 |
神経回路形成プロジェクトホームページ http://www.igakuken.or.jp/regeneration/
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