公募研究
低分子量G蛋白質Rabは真核生物に普遍的に保存された膜輸送の制御因子で、高等哺乳動物では60種類以上の異なるRab分子が存在し、様々なタイプの膜輸送を制御している。ダイナミックな膜動態を伴うオートファジー(自食と呼ばれる細胞内蛋白質分解機構)も例外ではなく、近年複数のRab分子のオートファジーへの関与が報告されている。しかしながら、Rabの種類数が非常に多いこともあり、Rabによるオートファジー制御の仕組みは不明な点が多い。当研究室ではこれまで、独自に開発したRabの網羅的解析ツール『Rab panel』を駆使して、オートファジーのダイナミックな膜動態の制御機構の解明に取り組んで来た。その過程で、Rab12によるアミノ酸トランスポーターPAT4の分解制御を介した全く新しいタイプのオートファジーの制御機構の存在を明らかにしている。しかし、Rab12の制御に関わる上流の活性化因子やエフェクター分子が未同定であったため、Rab12の時空間的な制御基盤の詳細はこれまで明らかではなかった。そこで本年度は、Rab12の上流活性化因子(GEF)の探索を行い、Dennd3という分子がRab12の活性化因子として作用することを突き止めた。すなわち、Dennd3を過剰発現する細胞ではRab12の活性化によるPAT4の分解が亢進するため、細胞内アミノ酸量が減少し、結果的にオートファジーが亢進することが明らかになった(J. Biol. Chem., 2014)。一方、Dennd3をノックダウンした細胞では、Rab12の不活性化によりPAT4の分解が抑制されるため、細胞内アミノ酸量が増加した。しかし、Dennd3のノックダウンはAktシグナルの低下も引き起こすため、mTORC1の活性低下を招き(アミノ酸量増大によるmTORC1活性化を相殺)、オートファジーには影響が認められなかった。
1: 当初の計画以上に進展している
当初の目的であるRab12の活性化因子としてDennd3を同定することに成功すると共に、これまで謎に包まれていたRab12の活性化機構の一端を解明することに初めて成功した。
当初の予定通り研究計画を推進する。
すべて 2015 2014 その他
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (2件) 備考 (1件)
J. Biochem.
巻: 印刷中 ページ: 印刷中
10.1093/jb/mvv032
Autophagy: Cancer, other pathologies, inflammation, immunity, infection, and aging
巻: 7 ページ: 103-112
細胞工学
巻: 34 ページ: 132-137
J. Biol. Chem.
巻: 289 ページ: 13986-13995
10.1074/jbc.M113.546689
http://www.lifesci.tohoku.ac.jp/teacher/t_fukuda/