研究領域 | オートファジーの集学的研究:分子基盤から疾患まで |
研究課題/領域番号 |
26111505
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
鈴木 邦律 東京大学, 新領域創成科学研究科, 准教授 (20373194)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | オートファジー / 出芽酵母 / オートファゴソーム / 小胞体 / ER exit site / オルガネラ形成 / 栄養飢餓 / Atgタンパク質 |
研究実績の概要 |
単細胞真核生物である出芽酵母では、オートファジーが誘導されると、pre-autophagosomal structureと名付けられた構造体から袋状の膜が伸展して隔離膜となり、最終的に端が閉じて、被分解物を内包した球状の二重膜胞であるオートファゴソーム(以下AP)が完成する。オートファジー研究において依然として大きな問題は、AP膜の供給元の同定と膜供給の分子メカニズムである。そこで、申請者はAP膜に局在する膜タンパク質に注目した。膜タンパク質は細胞内の小胞輸送システムを介して標的となるオルガネラに供給されるので、膜タンパク質を同定することは、AP膜がどのオルガネラから供給されているのかという基本的な問いの解明に直接つながる研究となる。出芽酵母においてAP膜に局在する膜タンパク質としては、Golgiを経由してAP膜に供給されるAtg9が唯一知られるのみだった。最近になって、AP形成とERとの関係が示唆されるようになってきたが、AP膜に局在するERの膜タンパク質は未だに知られていない。本研究提案では、隔離膜の精製系を確立し、隔離膜に局在する膜タンパク質をプロテオーム解析により網羅的に同定することを目的とする。本研究を通じて、隔離膜を構成するタンパク質や脂質成分の起源を解明する手がかりを得たい。 隔離膜を生化学的に同定するためには、可能な限り多くのマーカータンパク質を知ることが先決である。平成26年度は、隔離膜のマーカータンパク質としてAtg3を同定し、報告した(Ngu et al., J. Biol. Chem., 2015)。現在他にも隔離膜のマーカータンパク質候補が得られているので、引き続き解析を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「研究実績の概要」の項目でも記載したように、論文を公表できたことが第一に挙げられる。論文の結果を基盤として、隔離膜の新たなマーカータンパク質を同定しつつある。継続してマーカータンパク質を同定することにより、生化学的な解析を進めやすくなると期待される。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画の当初より、APを構成する膜タンパク質を同定することが大きな目標であった。我々は隔離膜を蛍光顕微鏡下に可視化する独自の手法を持っている(Suzuki et al., J. Cell Sci., 2013)。この方法を使用することによりあるタンパク質が隔離膜に局在するか否かを容易に判断することができる。また、この手法の最大の利点は隔離膜を細胞内に蓄積させることができる点である。本手法により隔離膜を細胞内に蓄積させ、生化学的な同定に道を開きたい。平成27年度以降の予定としては、(1)Atgタンパク質の中で未だ局在未知のタンパク質に注目して局在解析を進めることで、新たな隔離膜マーカーを得、(2)隔離膜蓄積法を改良することにより、隔離膜を生化学的に同定する方向で研究を推進する。
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