公募研究
オートファゴソーム形成の初期過程では複数のAtgタンパク質からなる高次会合体が形成される。本研究では、Atg高次会合体の形成過程における「Atgタンパク質群の相互作用ネットワーク」について解析を行い、以下の知見を得た。Atg高次会合体の形成初期過程を制御するAtg1複合体について解析を進め、高度リン酸化タンパク質Atg13が飢餓に伴って脱リン酸化されることでAtg1およびAtg17と相互作用し、これらの相互作用を介して両者を繋ぎ留めることでAtg1複合体の形成を促すことを明らかにした(Nat. Struct. Mol. Biol., 21, 513-521, 2014)。Atg1複合体の集積後にはAtg9ベシクルが集積することが知られているが、局在化の分子機構についてはよく分かっていなかった。in vivoにおける相互作用解析から、Atg13のN末端HORMAドメインとAtg9のN末端ドメインが相互作用することを見出し、Atg13がC末端の天然変性領域を介してAtg1複合体を形成した後、N末端HORMAドメインを介してAtg9ベシクルをリクルートすることを明らかにした(Proc. Natl. Acad. Sci., 112, 3350-3355, 2015)。Atgタンパク質群のMITドメインを介した相互作用について解析を行い、Atg1 MITとAtg13 MIMの相互作用がAtg9 MIMの導入により競合することを明らかにした。また、これらの相互作用がAtg14 MIMやAtg38 MITとは競合・協調しないことも同時に確認している。オートファゴソーム形成過程に関わるMIT-MIM相互作用についてAtgタンパク質以外の因子について解析を行うため、各Atgタンパク質のMITドメインをベイトとしてスクリーニングを行い、複数の候補タンパク質を同定した。
1: 当初の計画以上に進展している
オートファゴソーム形成過程における「Atgタンパク質群の相互作用ネットワーク」について解析を行い、複数のAtgタンパク質間相互作用を新規に見出すことに成功し、それぞれ学術雑誌に報告している。これらの点については交付申請書に記載した研究計画が十分以上に達成されている。また、MIT-MIM相互作用が仲介するネットワーク解析についても、Atgタンパク質間での相互作用解析の他に、Atgタンパク質以外の因子についても相互作用スクリーニングを行っており、これらを総合的に考えると研究計画の達成度については「当初の計画以上に進展している」と言える。
相互作用スクリーニングで得られた候補因子について、ベイトに用いたAtgタンパク質との相互作用の確認などを行い、同時に、遺伝子欠損株を作製してオートファゴソーム形成への関与について解析を行う。また、MIT-MIM相互作用以外にも新規の相互作用を見出しており(Atg1-Atg13-Atg17相互作用に関わる新規の相互作用様式)、この相互作用についても注力して解析を進めて行く予定である。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 1件)
Proc. Natl. Acad. Sci.
巻: 112 ページ: 3350-3355
10.1073/pnas.1421092112
Nat. Struct. Mol. Biol.
巻: 21 ページ: 513-521
10.1038/nsmb.2822