研究実績の概要 |
哺乳類細胞のリソソームや出芽酵母の液胞はオートファゴソームと融合し、内容物の分解を行う。イノシトールリン脂質の1つであるホスファチジルイノシトール3,5-二燐酸[PtdIns(3,5)P2]はリソソームや液胞の機能に必須であることが知られているが、含量が非常に少ないため(リン脂質全体の0.01%以下)、そのナノレベルの局在は不明であった。またPtdIns(3,5)P2と結合するプローブの多くが、PtdIns(3,5)P2より遥かに含量の多いPtdIns(3)PやPtdIns(5)Pにも結合することも分布決定を困難にしてきた。我々は急速凍結・凍結割断レプリカ標識(QF-FRL)法でPtdIns(3,5)P2を特異的に標識する方法を開発することに成功した。FLAGタグを付けた出芽酵母Atg18pのリコンビナントタンパク質を主たるプローブとして用い、過剰量のp40phox PXドメインのリコンビナントタンパク質でPtdIns(3)Pをマスクすることにより、PtdIns(3,5)P2特異的な標識を得た。この方法を適用することにより、高浸透圧刺激下の酵母液胞で形成される膜内粒子とVph1pが排除されたLoドメインにPtdIns(3,5)P2が高密度に分布することを見出した。また管・胞状の形態を示す哺乳類細胞の後期エンドソームでは、胞状部分にPtdIns(3,5)P2が集中することが分かった。このような微細なレベルでPtdIns(3,5)P2の集中が起こることは新たな発見である。この方法を用いることにより、オートファジーにおけるPtdIns(3,5)P2の機能についても解析が可能になると考えられる。
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