研究実績の概要 |
静止期の出芽酵母では多数の脂肪滴が形成され、液胞内で分解を受けることが知られている。我々は細胞質の脂肪滴が液胞内に取り込まれる機構を調べるため、酵母を急速凍結し、凍結割断レプリカ標識法による解析を行った。先に行った研究により、酵母のマクロオートファジーで形成されるオートファジー小体では、ホスファチジルイノシトール3燐酸が細胞質側膜葉よりも内腔側膜葉に遥かに多く存在すること、一方、液胞膜のホスファチジルイノシトール3燐酸は細胞質側膜葉に限局していることを見出している(Cheng et al, Nat Commun, 2014)。このようなホスファチジルイノシトール3燐酸の非対称性分布を利用して、マクロオートファジーで形成されるオートファジー小体とミクロオートファジーで形成される小胞を区別することが可能となった。検索の結果、1) 静止期の酵母では脂肪滴が液胞膜に直接包まれるミクロオートファジーのメカニズムで取り込まれること、2) 静止期の液胞膜は、膜内粒子が豊富で、かつVph1p が存在する液体非秩序相 (Ldドメイン)と、膜内粒子がほとんどない液体秩序相(Lo ドメイン)に分化し、そのうちLo ドメインの面積が拡大して脂肪滴を取り囲むこと、3) Ldドメインの膜内粒子は液胞膜が閉じる部分にネックレス状の構造を形成することなどを見出した。さらに脂肪滴のミクロオートファジーの過程は fab1Δ, vac7Δなどでは正常に進行せず、ホスファチジルイノシトール3,5-二燐酸が必要であると推測された。
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