オートファジーは主に飢餓により誘導される細胞内分解機構である。栄養シグナルはTORC1に入力され、TORC1がAtg13等の基質のリン酸化を介して、オートファジー誘導を調節している。この基本的な機構はさらに精妙に調節されていることが想定されているが、その実態はほぼ不明である。本研究では酵母ゲノムワイドライブラリーを網羅的にスクリーニングすることで同定したNpr2の機能解析を起点として、オートファジー調節機構の解明に挑んだ。その結果、Npr2がTORC1の上流因子GTR1のGAPとして機能することを見出し、またGtr1Gtr2を液胞膜へ繋留するEgo複合体の新規因子Ego2を同定した。TORC1はGtrやEgoとともに液胞膜上およびそれに付随した点状に局在し、栄養源の有無に応じてその間を移動することを明らかにした。さらにその移動がTORC1活性と関連することも見出した。その他、飢餓培養時にオートファジーが誘導されるが長時間飢餓培養時にオートファジーは終結する。その終結機構に関与する新規の液胞膜に局在するタンパク因子の同定にも成功している。また哺乳類細胞において、ホスファチジルイノシトール3ホスファターゼMTMR3がmTORC1と結合し、その活性を抑制していることも見出し、このことがMTMR3の不活性型の発言でオートファジーがゆうどうするという我々の以前の発見の分子基盤の一端であることを解明した。これらの因子を精妙に調節することでオートファジーのファインチューニングが行われているという新しいモデルを提唱した。
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