公募研究
細胞内分解機構オートファジーは、飢餓の際には細胞内成分の再利用を促進し、またオルガネラが損傷した際にはその排除を行うなど、ストレス環境下において細胞恒常性を維持する役割を果たす。自然免疫は細菌やウイルスなどの病原体に対する感染防御機構であるが、一方で自然免疫は炎症性因子の産生を誤って誘導することにより組織損傷を引き起こして疾患発症要因となる負の側面も有している。これまでの研究から、オートファジー不全に陥った自然免疫担当細胞が炎症性因子を過剰産生し、炎症性疾患の発症を惹起することを見出している。そこで、オートファジーによる自然免疫制御の分子機序の解明に取り組んだ。解析の結果、以下の2点が明らかになった。(1) リポ多糖などの菌体成分の刺激により好中球からのNeutrophil extracellular traps (NET)の産生が誘導されることが知れているが、ヒト膵アミロイドポリペプチド(hIAPP)などの自己成分によってもNETの産生が誘導されることが明らかになった。NETの産生には、NADPHオキシダーゼを介して産生された活性酸素種によりアズール顆粒の膜が損傷し、好中球エラスターゼの細胞内漏出が起こることが必須となる。オートファジー不全の好中球は、過剰のNETを産生することが明らかになった。(2) ATG16L1は、基底状態や栄養飢餓状態において誘導されるオートファジーに必須の因子である。しかしながら、リステリアの感染時には、オートファゴソームのマーカーであるLC3がATG16L1欠損細胞において菌の周囲にリクルートされる。また、オートファジーの基質であるp62の分解もATG16L1の存在に関わらず誘導される。よって、ファゴソームが損傷した際にATG16L1を必要としない特殊なオートファジーが誘導される可能性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
自然免疫応答の制御における新たなオートファジーの役割を見出した。また、ファゴソーム損傷に応じて、新しいタイプのオートファジーが誘導されていることを示唆する実験結果を得た。さらに、これらの研究成果を国内外の学術集会で口頭発表した。
(1) マクロファージや好中球などの貪食細胞において、損傷したファゴソームやアズール顆粒をオートファジーが除去するメカニズムを解明する。特に、ATG16L1の代わりとして働くオートファジー関連因子の同定に取り組む。(2) NETの産生をはじめとした炎症応答をオートファジーが抑制する病態生理的意義を、遺伝子改変マウスを用いて解明する。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 4件)
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