公募研究
遺伝性膵炎の原因遺伝子SPINK1のノックインマウスを樹立し、解析を行った。SPINK1ノックインマウスは正常に出生し、生後4週でヒト慢性膵炎と類似の病態が完成することが判明した。慢性膵炎を発症する過程で、① オートファジー不全、② p62の蓄積、③ 膵内トリプシン活性の亢進、④細胞死(アポトーシス、ネクローシス)を確認した。この結果は、オートファジー不全に伴うp62の蓄積とトリプシンの異所性(膵内)活性化が、細胞死を引き起こし、慢性膵炎の発症に深く関与することを示唆している。そこで、これらの要因がどのように関連しているのかを明らかにするため、①膵特異的Atg5欠損マウス、②カテプシンB欠損マウス(トリプシンの活性化を抑制するマウス)、③プログラムされたネクローシスの実行因子receptor-interacting protein kinase 3 (RIP3)欠損マウスとの二重変異マウスを解析した。評価指標として、膵内のオートファジー活性(LC3-II、p62、カテプシン活性)、膵内トリプシン活性、4週齢における慢性膵炎の重症度(線維化、炎症細胞の浸潤等)をSPINK1 ノックインマウスと比較した。その結果、Atg5との二重変異マウスではその重症度に差が見られなかった。オートファジー不全と同様の原因と考えられた。カテプシンB欠損マウスとの交配では、トリプシン活性が上昇しており、このマウスにおけるトリプシノーゲンの活性化にはカテプシンBを介する以外の経路が働いていることを示唆している。Rip3との二重変異マウスでは、その重症度が抑制され、このネクローシスが膵炎発症に重要であることが判明した。
2: おおむね順調に進展している
① 膵特異的Atg 5欠損マウス、② 膵特異的p62欠損マウスおよび膵特異的p62過剰発現マウス、③ カテプシンB欠損マウスとの二重変異マウスを計画していたため、①、③は解析が終了し、まもなく投稿を予定している。②は本年度(平成27年度)に行う。オートファジー制御化合物の探索(単離腺房細胞を用いたex vivo解析)は、現在膵腺房細胞の培養系を構築している段階である。今年度、化合物スクリーニングを行うシステムを用いて、化合物をスクリーニングし、オートファジーの制御化合物を探索する計画である。
平成26年度において、SPINK1ノックインマウス(慢性膵炎マウス)とAtg5, CathepsinB, Ripk3ノックアウトマウスとの二重変異マウスの解析は終了し、投稿に向けて準備中である。今年度は慢性膵炎発症過程におけるp62タンパクの機能解析を行う。これはSPINK1 knock-in;p62flox/flox;Ptf1a-creマウスを樹立し、線維化の程度、膵内の炎症マーカーを指標に解析する計画である。本年度は、これまでのin vivo研究に加え、in vitroの培養系を構築し、オートファジー制御化合物の探索を行う。膵腺房細胞の細胞株は存在しないため、マウスの胆管からコラゲナーゼを膵内に逆流させ、細胞を単離する。この単離腺房細胞(GFP-LC3(+))の培養液中にコレシストキニンを加え、オートファジーを誘導する。オートファジーの定量はGFPを指標にするが、あらかじめ、用意している化合物(共同研究者から供与していただく)を加えておき、GFP蛍光が増強、または減弱する化合物をスクリーニングする計画である。また、同時に腺房細胞内トリプシン活性も測定する。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (10件) (うち査読あり 10件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (5件)
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