本研究はオートファジーによるペルオキシソーム分解のシグナル伝達経路の解明、および植物におけるオートファジー制御機構の特異性を明らかにすることが目的であり、本年度は以下の解析を進めた。
1. LON2によるオートファジー抑制機構の解明:LON2の相互作用因子を同定したところ、候補因子の中に、サイトゾルおよび顆粒状構造に局在するものがあった。動物細胞において、この因子はオートファジーに関与することが報告されており、ペルオキシソーム膜のLON2との相互作用が選別機構の鍵となる可能性が示唆された。 2. 植物における新規オートファジー遺伝子の探索:ペルオキシソームの分解が抑制されたpeup変異体群を得ている。選択的ペルオキシソーム分解に関わる遺伝子欠損株を選抜するために、さらに2段階のスクリーニングを行い、peup32を解析対象として絞り込んだ。peup32はペルオキシソームの形態に異常が見られた。またPEUP32の欠損により細胞死が促進することが明らかとなった。 3. atg変異体の解析:植物におけるオートファジー分解の過程を詳細に観察するために、atg2、atg7変異体においてATG18a-GFPによるオートファゴソーム膜の可視化を行った。その結果、これらオートファジー因子の欠損株においてもオートファゴソーム膜の伸展が見られ、ペルオキシソームを囲むような像が得られた。この結果は、酵母における報告とは異なるものであり、例え同じ遺伝子のセットを有していても、その制御機構は生物種により異なることを示唆する興味深いものである。
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