研究領域 | オートファジーの集学的研究:分子基盤から疾患まで |
研究課題/領域番号 |
26111524
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研究機関 | 国立感染症研究所 |
研究代表者 |
津久井 久美子 国立感染症研究所, 寄生動物部, 主任研究官 (00420092)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | autophagy / Atg8 / Entamoeba histolytica / protist / phagocytosis / lysosome |
研究実績の概要 |
赤痢アメーバAtg8の貪食胞への動員を検討した。Atg8は閉鎖した貪食胞のなかでも特に閉鎖前の貪食胞に集積した。よって貪食の初期に重要であると考えられた。さらにAtg8遺伝子発現抑制株で観察された貪食胞酸性化の遅延の分子機構を知る目的で、プロテアーゼ輸送に関わるVps26の動員を検討した。Vps26はレトロマー複合体の一つで赤痢アメーバにおいてプロテアーゼ輸送に関与する(Nakada-Tsukui et al., 2005)。Atg8遺伝子発現抑制株ではVps26の動員が遅延すると予想したが、顕著な差はみられなかった。よってAtg8が関わる分子過程はプロテアーゼ輸送とは独立したものであることが示唆された。 Atg8の結合分子として抗Atg8抗体による免疫沈降実験から、fructose 1,6-bisphosphate aldolase, triosephosphate isomeraseという二種類の解糖系酵素を同定した。 赤痢アメーバにおいてAtg5-Atg12複合体の存在が明らかでなった。そこでAtg12候補遺伝子の発現抑制株を作成したところ、Atg8の脂質修飾が顕著に阻害された。よって赤痢アメーバAtg8の脂質修飾にもAtg5-Atg12複合体が関与することが明らかとなった。さらにGFP-Atg5, GFP-Atg12融合タンパク質発現アメーバ株を作成、その発現を確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
赤痢アメーバにユニークなAtg8の機能として貪食胞成熟への関与があるが、その分子過程の一端と考えられたVps26についてその関与を否定した。結果はネガティブであったが別タンパク質の関与について今後検討することができる。Atg8の結合分子について候補分子を見出し、タグ付き候補遺伝子発現株も樹立されたことから、機能解析に向けて順調に進展している。Atg12遺伝子の同定に成功したことから、赤痢アメーバにも広くモデル生物で保存しているAtg8脂質修飾過程が存在することが示された。本研究の目的である赤痢アメーバAtg8の機能解析において、脂質修飾を制御する分子の解明は大きな進展であった。
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今後の研究の推進方策 |
Atg8の貪食胞成熟における機能の解明について、Atg8遺伝子発現抑制株でphosphatidylinositol 3-phosphateの貪食胞への動員を検討する。また、Atg8遺伝子発現抑制株と野性株から貪食胞を精製し、プロテオーム解析からAtg8の関与する分子過程を明らかにする。 Atg8結合分子について、myc-aldolase, myc-TPI発現株を用い、Atg8との結合を評価する。さらにグルコース枯渇時のaldolase, TPIそしてAtg8の局在、量の変化を検討し、解糖系とAtg8との関係を明らかにする。 Atg5-Atg12の解析について、GFP-Atg5, GFP-Atg12発現株を用い貪食過程をリアルタイム観察し、Atg8の動員にAtg5-Atg12がどのように関与するか観察する。さらに抗GFP抗体による免疫沈降を行い、Atg5-Atg12複合体の全容を明らかにする。
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