研究領域 | 脳内環境:恒常性維持機構とその破綻 |
研究課題/領域番号 |
26111719
|
研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
高橋 琢哉 横浜市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (20423824)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | AMPA受容体 / PET Probe / 精神疾患モデルマウス |
研究実績の概要 |
本研究はグルタミン酸受容体であるAMPA受容体を認識するPET (ポジトロン断層撮影)プローブを開発し、脳全体のイメージングを長期間にわたって行い、精神疾患モデルマウスの解析を行うことを目的としている。 AMPA受容体のシナプスへの移行はシナプス可塑性のメカニズムの一つとして広く認識されている。AMPA受容体シナプス移行は細胞表面のAMPA受容体の提示量と密接に関係していることが知られている。 本研究ではAMPA受容体の細胞表面提示を反映するPET Probeの作製を目指している。文脈恐怖条件付けの一つであるinhibitory avoidance test (IA test: 暗い部屋と明るい部屋を隣接して作製し、ねずみが両者を自由に行き来できるようにする。ねずみは通常暗いボックスに入ろうとするが、暗いボックスに入ったときに電気ショックを与え、入らないように条件付けする海馬依存的学習)において、海馬におけるAMPA受容体の細胞表面提示量が増えていることは見出している。この系を用いて、既存のAMPA受容体結合化合物をラットにinjectionし、質量分析器を用いて海馬における化合物の量が増えている化合物をスクリーニングした。 その結果、compound AがIAにおいて海馬組織における含有量が増加していることが明らかになった。その化合物を放射性ラベルし、ラットにおいて撮像したところ、顕著なシグナルが海馬、線条体に見られた。 さらにこの結合が特異的であることを示すため、同じ化合物の過剰量のcold体と放射性ラベルされた化合物を同時にinjectionして撮像したところ、シグナルのintensityが顕著に下がった。このことはcompound Aによるシグナルが特異的であることを示している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
AMPA受容体のPET Probeを開発することは記憶のメカニズムを解明する上で非常に大きな技術開発であり、その候補化合物を同定し、特異的シグナルが撮像できたことは予想を上回る進展であると考える。 既知のAMPA受容体結合化合物のスクリーニングは20種類近くにおよび、IAを用いたスクリーニング系の確立と合わせると非常に大きな労力になる。その中で有望な候補化合物を絞り込めたことは大きな成果であると信じている。
|
今後の研究の推進方策 |
今後はこの技術を用いて、自閉症モデルマウスに代表される精神疾患モデルマウスの解析を行っていく。精神疾患モデルマウスに頚静脈的に放射性ラベルした化合物を投与し、PET撮像する。吸入麻酔により入眠させ、尾静脈より標識化合物を投与する。その後PETカメラを用いて経時的に撮像を行う。 一部の自閉症モデルマウスではAMPA受容体の細胞膜表面提示量が低下しているとの報告があるが、社会性行動に伴うAMPA受容体の動的変化については何もわかっていない。 したがって、自閉症モデル動物を用いて、社会性行動時にどの領域において、AMPA受容体の量的変化が見られるかを検討する。Three chamber test, social recognition test, social interaction testをそれぞれ課し、30分後に、吸入麻酔を用いて入眠させ、尾静脈より標識化合物を投与する。その後PETカメラを用いて経時的に撮像する。
|
備考 |
横浜市立大学医学部生理学教室ホームページ http://neurosci.med.yokohama-cu.ac.jp
|