研究領域 | 脳内環境:恒常性維持機構とその破綻 |
研究課題/領域番号 |
26111722
|
研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
菅田 浩司 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (60508597)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | ショウジョウバエ / 神経幹細胞 / neuroblast / 再活性化 |
研究実績の概要 |
神経幹細胞の可塑性に影響を与える遺伝子変異について解析を進めている。我々は、ある脂質代謝酵素の変異によって、発生過程の神経幹細胞が選択的かつ劇的に細胞死を引き起こす事を見出した。この細胞死が誘導されるタイミングを特定するために、個体発生に従った解析を行った結果、胚期及び孵化後しばらくは表現型が認められないのに対して、孵化後12時間程度から急激に観察される事を見出した。この発生時期は休止していた神経幹細胞が再活性化する時期と一致する。従って、細胞死と再活性化の関連についてさらに解析を進めた。その結果、変異体の神経幹細胞にインスリン受容体のドミナントネガティブ体を強制的に発現させた場合、及び、変異体の脂肪細胞表面のアミノ酸トランスポーターの発現を抑制した際に細胞死がほぼ完全に抑制できることを見出した。これらの遺伝学的な操作はいずれも神経幹細胞の再活性化を抑制するために用いられる手法である。さらに、ショウジョウバエの実験に用いる餌の中から酵母を完全に除き、体循環するアミノ酸濃度の上昇を抑制した場合においても、細胞死は顕著に抑制できた。以上の結果から、本変異体では神経幹細胞の再活性化に依存して細胞死が誘導されていると考えられる。 また、変異体の個体レベルでの毒性を解析した結果、孵化後24時間程度から野生型と比較して個体の発育が低下した。また、孵化後24時間程度まではほぼ全ての個体が生存したが、その後、急激に生存率が低下し、孵化後72時間程度で致死となる事を見出した。これらの結果から、神経幹細胞の再活性化の異常と個体の致死性の間に相関性があることが示唆される。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
一部の実験において当初の予定と異なる結果を得たため計画を変更した。その結果、研究費は一部を次年度に繰越たが、予定した実験は概ね遂行できたため。
|
今後の研究の推進方策 |
研究実績の概要で示した表現型の原因となっている組織(または細胞種)を特定し、そのシグナル伝達機構を始めとする分子機構の解明を進める。そのためには、ショウジョウバエを用いた遺伝学的な手法のみならず、複数の生化学的な手法を組み合わせる必要があると考えられる。
|