公募研究
神経特異的RNA結合タンパク質HuCのノックアウト(KO)マウスは正常に発育するが生後7ヶ月になると歩行障害などの運動失調症状を呈する。このマウスの小脳では神経回路が正常に形成されたのちに遅発性にシナプス脱落を伴ったプルキンエ細胞の軸索変性が起こるが、プルキンエ細胞は細胞死に至らない。HuC KOマウス小脳における詳細な電子顕微鏡解析を行った結果、プルキンエ細胞の軸索膨大部に様々な細胞内小器官が蓄積し、細胞質の構成成分が軸索へと流出している所見が観察された。このことから、HuC KOマウスのプルキンエ細胞では軸索輸送の障害に加え、細胞体から軸索に細胞内小器官等の異常流出が生じている可能性が考えられた。通常、ニューロンでは細胞体と軸索の間に拡散障壁(AIS)が形成されており、軸索へ移行できる細胞内小器官やタンパク質は制限されている。HuC KOマウス小脳では、AISの最も重要な構成因子の1つであるAnkyrin-Gの発現量および選択的スプライシングのパターンが有意に変化していた。野生型に比べHuC KO小脳ではexon 34を有する Ankyrin-Gのバリアントが増加しおり、ZU5ドメイン中にexon 34が挿入されることによりSpectrinとの結合親和性に変化が起こっていることが示された。同バリアントは胎生期に多く発現するものの成体脳では極めて少ないため、HuC KO小脳では異時性に”胎仔型Ankyrin-G”が出現していると言える。我々はこれまでにHITS-CLIP法を用いた標的探索によりAnkyrin-GがHuによる選択的スプライシング制御を受けることを明らかにしており(Ince-Dunn G, Okano HJ et al. Neuron 2012)、Huタンパク質の欠失によりAIS機能の低下が起こっている可能性が強く示唆される。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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10.1016/j.neures.2015.11.009.
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