公募研究
ミトコンドリアダイナミクスの破綻は神経疾患などさまざまな病態を引き起こす。私たちはミトコンドリア外膜に局在するユビキチンリガーゼMITOLを同定し、MITOLの機能異常により活性酸素種が大量に漏出することを明らかにした。このようにMITOLがミトコンドリの機能維持に必須であるが、病態との関連性については不明な点が多い。これまで研究成果においてMITOL欠損したマウス繊維芽細胞においてDrp1の蓄積が観察されているが、生体内での役割は不明であった。今回私たちは神経組織特異的なMITOL欠損マウスを作製し、Drp1の蓄積の有無について観察したところ、ミトコンドリア画分においてDrp1の蓄積を認め、実際に神経細胞においてミトコンドリアの分裂の亢進を観察した。これらの結果よりDrp1がMITOLの生理的基質であることを明らかにすると共に、MITOL欠損マウス脳においてミトコンドリア機能不全が起こっていることが示唆された。さらにMITOLの破綻によりアルツハイマー病など様々な神経変性疾患の病態に深く関与しているかどうかについて実験的に検証を行った。MITOLと神経変性疾患との関連性を明らかにするためにMITOL欠損マウスの神経組織について病理解析を詳細に行った。その結果、大脳皮質や海馬神経細胞において、神経細胞の萎縮や細胞死の亢進が顕著に認められた。また、行動解析においても記憶学習能力および空間学習能力の著しい低下が認められ、アルツハイマー病との病態との類似性が示唆された。今後、MITOL欠損マウスにアルツハイマー病モデルマウスを交配することにより病態の増悪の有無や分子病理的変化を詳細に解析する予定である。
2: おおむね順調に進展している
MITOL欠損マウスにおいて神経細胞の萎縮や細胞死の亢進、記憶学習能力の低下が認められ、アルツハイマー病との関連性が示唆されたことより、MITOLと神経変性疾患との関連性が密接であることが強く示唆されたことは大きな進展である。
今後、MITOL欠損マウスにアルツハイマー病モデルマウスを交配して、病態の増悪の有無や分子病理的変化を詳細に解析することより、アルツハイマー病におけるミトコンドリアの役割を明らかにする。さらに、MITOL欠損マウスは新たな神経変性疾患の病態モデルマウスになるかどうか明らかにする。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 1件)
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