公募研究
申請者は既に2013年に、ParkinのSer65がPINK1依存的にリン酸化されることや、このSer65リン酸化がParkinの機能に重要であることを報告している(Iguchi, JBC, 2013)。にもかかわらず、PINK1の機能がParkinのリン酸化だけで説明できるかというと、決してそうではない。というのも、ParkinのSer65リン酸化模倣変異体(S65D, S65E)が細胞内でPINK1機能をバイパスして活性型ユビキチン連結酵素(E3)に変換されることはないし、変異Parkinはミトコンドリアにも移行しないからである。これらの結果は、Parkin以外にも重要な未同定のPINK1基質が存在することを強く示唆している。そこで申請者らは新しいPINK1基質の同定を目指したスクリーニングを行い、昨年度にユビキチンこそが未同定であったPINK1の鍵基質であることを見出した。具体的な実験の成果として、1) PINK1免沈産物をsourceとして用いて試験管内でユビキチンのリン酸化を再構成できること、2) MS解析や変異導入法からユビキチンのリン酸化部位がSer65であること、3) ユビキチンのリン酸化模倣変異体(S65D)をin cellで共発現した時にParkinがミトコンドリア状態非依存的に活性化されること、4) 上記の現象はcell free系で試験管内再構成可能であること、などを見出した。
2: おおむね順調に進展している
細胞内のミトコンドリアの品質管理がどのように行なわれており、それがどのようにパーキンソン病の発症を予防しているのかについて、PINK1/Parkin/ubiquitin の3者が協調して機能するプロセスの全体像を明らかにしつつあり、研究はおおむね順調に推移している。
パーキンソン病の発症を予防している細胞内のミトコンドリアの品質管理について、PINK1 によってリン酸化されたユビキチンが Parkin に対して果たす役割を中心に、今後も引き続き未解明点の解明を進める。
すべて 2014 その他
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 2件) 備考 (1件)
Nature
巻: 510 ページ: 162 - 166
doi:10.1038/nature13392
実験医学
巻: 32 ページ: 2616 - 2620
細胞工学
巻: 33 ページ: 974-976
http://www.igakuken.or.jp/project/detail/ubiquitin.html