研究領域 | 脳内環境:恒常性維持機構とその破綻 |
研究課題/領域番号 |
26111730
|
研究機関 | 公益財団法人東京都医学総合研究所 |
研究代表者 |
野中 隆 公益財団法人東京都医学総合研究所, 認知症・高次脳機能研究分野, 副参事研究員 (30356258)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | TDP-43 / カゼインキナーゼ / リン酸化 / 凝集体 |
研究実績の概要 |
前頭側頭葉変性症(FTLD-TDP)や筋萎縮性側索硬化症(ALS)の患者脳などに見られるユビキチン陽性の細胞内異常凝集体の主要な構成タンパク質としてTDP-43が同定された。患者脳に蓄積したTDP-43はユビキチン化および異常リン酸化を受けていることが知られているが,どのようなキナーゼがTDP-43の細胞内蓄積に関与するかは不明である。本研究では,TDP-43の細胞内蓄積を促進させるキナーゼの同定を目的とした。SH-SY5Y細胞を用いて,これまでにTDP-43の異常リン酸化に関与することが報告されている種々のキナーゼとTDP-43を共発現させて,TDP-43リン酸化抗体を用いた生化学および免疫組織化学的解析を行った。その結果,カゼインキナーゼ1デルタ(CK1d)のC末端部分を欠いた活性型CK1dの共発現により,TDP-43の核から細胞への局在変化および細胞質蓄積が顕著に認められた。またプラスミド由来のTDP-43だけでなく,内在性TDP-43も細胞質で蓄積した。さらにTDP-43と活性型CK1dの共発現を経時的に観察したところ,リン酸化TDP-43が蓄積した後で断片化が生じることが判明した。またこれらの変化は活性型CK1dに依存的であり,キナーゼ活性を欠く変異型CK1dではこの様な変化は見られなかった。以上の結果は,活性型CK1dのキナーゼ活性に依存して細胞内でTDP-43が局在変化および蓄積することを示しており,TDP-43の細胞内蓄積の新たなメカニズムを示している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
培養細胞を用いた実験系において,活性型カゼインキナーゼデルタ(CK1d)を細胞に発現させると内在性あるいはプラスミド由来の全長TDP-43が細胞内で蓄積することを見いだし,当初の計画通りに,どのようなメカニズムでTDP-43が細胞内蓄積するのかについて検討を行っている。現在のところ,CK1dの活性依存的にTDP-43の蓄積が認められ,不活性型のCK1dではその効果は見られない。また,CK1dによるTDP-43の蓄積に必須なリン酸化部位の同定をプロテオミクス解析で行っている。
|
今後の研究の推進方策 |
培養細胞を用いた実験系において,CK1dによるTDP-43蓄積の詳細なメカニズムの解明を行う。また,人為的なシード導入を伴わないTDP-43の細胞内蓄積のin vivoモデルを確立し,凝集体の細胞間伝播のメカニズムを解明する。実際にin vivoにおいて細胞内凝集体が細胞から細胞へと伝播するかどうかを検証するために,培養細胞で認められたTDP-43凝集体形成をトリガーするCK1dをマウスやショウジョウバエに発現させて,実験動物を用いた細胞内タンパク質蓄積モデルの構築を行い,伝播のメカニズムの解明に迫る。
|