公募研究
本研究は、ヒト初期発生過程におけるDNAメチル化ダイナミクスを、全ゲノムレベルで明らかにすることを目的としている。本年度は、ヒト卵子、精子および胚盤胞の全ゲノムバイサルファイトシークエンシング(WGBS)解析を行い、DNAメチル化状態を詳細に解析した。検体は不妊治療を目的として採取されたもののうち、治療に用いられなかったものを、インフォームドコンセントを得た後に、解析に使用した。各検体より抽出したゲノムDNAより、Post-bisulfite adaptor-tagging (PBAT)法を用いてライブラリーを作製し、次世代シークエンサーを用いてWGBS解析を行った。その結果、ゲノム中の全CpGサイトのうち87~96%について、DNAメチル化率を決定することに成功した。卵子、精子、胚盤胞における平均メチル化率はそれぞれ54、76、 26%と全く異なっており、受精前後でDNAメチル化状態が大きく変化することを見出した。さらに詳細な解析を行い、①雄性ゲノムに比べ、雌性ゲノムの脱メチル化の程度は非常に弱いこと、②ヒトではマウスの2倍以上のインプリンティング制御領域が存在すること、③タンデムリピートを含むトランスポゾンが雄性ゲノムの脱メチル化から特異的に保護されること、④セントロメア領域のメチル化状態がヒトとマウスで大きく異なること、などを明らかにした。
2: おおむね順調に進展している
当初の計画通り、ヒト卵子、精子、胚盤胞のWGBS解析を行った。その結果、DNAメチル化はゲノム全体でダイナミックに変化するものの、その変化の程度は領域によって大きく異なり、インプリンティング制御領域や一部のレトロトランスポゾンがユニークな制御を受けることを明らかにした。さらに、マウスとの相違点も複数見出しており、十分な成果が得られたと考えている。
来年度は着床後のDNAメチル化の変化に着目し、胎児臍帯血および胎盤のWGBS解析を進める。解析結果を生殖細胞や胚盤胞のメチロームデータと比較し、着床に伴う新規メチル化の獲得について解析する。また、新規インプリンティング制御領域の同定も進める。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (1件)
Hum Mol Genet.
巻: 23 ページ: 992-1001
PLOS Genetics.
巻: 10 ページ: e1004868