公募研究
受精卵は着床直前に子宮内に移入し、子宮の作用によって活性化され、子宮への接着反応を開始する。着床により胚の細胞分化が加速し、胚のDNAメチル化は着床の前後でダイナミックに促進されるが、そのタイミングの詳細は明らかでない。初期胚発生の後半(着床直前)の過程で、子宮‐胚間の協調的な作用が必須と考えられているが、その分子機構は不明である。初期胚の発生は子宮からの刺激がなければ胚盤胞の状態で休眠状態(dormancy)となって止まるが、卵巣からのエストロゲンの刺激を子宮が受けると、子宮内膜からの何らかの生理活性物質の分泌によって胚は活性化され胚の接着反応が開始するという、胚盤胞活性化(activation)の機構が存在すると考えられている。この胚盤胞活性化が可能な起こる前段階として、プロゲステロンによる子宮環境の調整が重要であるが、その機構は明らかでなかった。本年度の研究では、胚着床は通常子宮体部で起こり子宮頸部では起こらないことから、その比較によって着床の仕組みを明らかにしたいと考えた。野生型マウス子宮体部と頸部の着床直前の分子変化を比較したところ、子宮頸部では子宮体部に比較してmiR-200aが増加しており、プロゲステロン受容体発現の低下と局所でのプロゲステロン代謝促進を介して、プロゲステロン・シグナルが低下していることを見出した。子宮体部では着床直前にmiR-200a発現が低下することから、子宮のホルモン作用および着床におけるmicroRNAによるエピジェネティックな調節機構の存在が明らかとなった。
1: 当初の計画以上に進展している
マウスを用いた研究が順調に行われており、その成果として本年度はプロジェクトに関連した論文を複数の雑誌に発表することができた。また、英文論文(Haraguchi, H. et al. MicroRNA-200a locally attenuates progesterone signaling in the cervix preventing embryo implantation. Mol. Endocrinol. )がNature Reviews EndocrinologyのResearch Highlightで紹介された(Nature Reviews Endocrinology 10, 445, 2014) 。これらの成果をさらに発展させ、次年度以降の研究の更なる進展が期待できる。
研究は問題なく順調に進展しているため、今後の研究は当初の研究計画に沿って研究を進める予定とする。
Haraguchi H, et al. Mol Endocrinol論文が、Nature Reviews EndocrinologyのResearch Highlightで紹介された。若手育成の結果、日本学術振興会特別研究員:DC 2名、RPD1名が採択された。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (9件) (うち査読あり 6件、 謝辞記載あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 5件)
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