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2014 年度 実績報告書

非典型的ポリコーム群MBLR複合体による減数分裂遺伝子のエピジェネティック制御

公募研究

研究領域生殖細胞のエピゲノムダイナミクスとその制御
研究課題/領域番号 26112516
研究機関広島大学

研究代表者

遠藤 充浩  広島大学, 原爆放射線医科学研究所, 特任准教授 (40391883)

研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2016-03-31
キーワードエピジェネティクス / 減数分裂 / 生殖細胞 / 始原生殖細胞 / 転写抑制 / ヒストン修飾 / ES細胞 / 幹細胞
研究実績の概要

ポリコーム群MBLR(Pcgf6)による減数分裂遺伝子の制御機構の詳細を明らかにするため、マウスES細胞を用いて研究を進めた。ES細胞においてMBLR複合体を精製して質量分析を行った結果、ヒストンH2Aに対するE3ユビキチンライゲースであるRing1A/BやRybp, L3mbtl2, HP1 beta/gamma, HDAC1/2, Max/Mga等が含まれ、Canonical PRC1と呼ばれる典型的なポリコーム複合体とは大きく異なることが分かった。また、MBLRがRing1B, Rybp, L3mbtl2, Max/Mgaと共に減数分裂遺伝子の転写開始点付近へ結合しており、このうちRing1BとRybpの結合はMBLRに依存しているが、L3mbtl2とMax/Mgaの結合はMBLRに依存しないことが分かった。さらに、MBLRが結合するDNA配列にはE-boxが高頻度で含まれており、MaxまたはMgaの発現をsiRNAでノックダウンするとMBLRの標的遺伝子への結合レベルが大きく低下し、これらの遺伝子の発現が脱抑制することが分かった。すなわちMBLRが形成する非典型的ポリコーム複合体はベーシック・ヘリックス・ループ・ヘリックス・ロイシンジッパー(bHLH-LZ)型転写因子Max/Mgaヘテロダイマーに依存して減数分裂遺伝子座へリクルートされ、Ring1によるヒストンH2Aモノユビキチン化修飾を介して標的遺伝子の転写抑制に寄与することが分かった。まだプレリミナリーではあるが、ES細胞から始原生殖細胞様細胞へ試験管内分化誘導する過程でMBLRを欠損させると、始原生殖細胞様細胞への分化が促進されるというデータも得られた。以上より、MBLR複合体が減数分裂遺伝子のエピジェネティック制御を介して、始原生殖細胞の分化に関与している可能性が示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究課題は、ポリコーム群MBLRによる減数分裂遺伝子制御の分子機構全容とその生物学的意義の解明を目指している。昨年度はマウスES細胞を用いた実験を進め、MBLRが形成するタンパク質複合体の構成因子に注目した解析を通して、MBLR複合体が減数分裂関連の遺伝子群を認識して結合する仕組みと、これら標的遺伝子の発現を抑制する仕組みについて、新たな知見を得ることに成功した。また、ES細胞から始原生殖細胞様細胞へ試験管内分化誘導する過程においてMBLRが機能している可能性も見出すことが出来ており、MBLRによる減数分裂遺伝子制御の生物学的意義の解明に向けて期待が持てる状況である。年度途中(9月)に理化学研究所から広島大学へ異動したため、マウス個体を用いた研究はまだこれからであるが、当初研究目的の達成に向けておおむね順調に進展していると思われる。

今後の研究の推進方策

今後はこれまでのES細胞を用いた解析と並行して、以下3点の方針で実験を進める予定である。
(1)「多能性幹細胞を用いた解析」 MBLR複合体の構成因子のうち、MBLR以外の因子(Rybp,L3mtbl2,Mgaなど)について、コンディショナルノックアウトES細胞を用いて標的遺伝子の同定を行い、クロマチン構造の変化の解析を通して発現制御メカニズムの全容解明を目指す。MBLRとL3mbtl2など複数の構成因子を両欠損させることによる影響も調べる。さらに、他の多能性幹細胞(エピステムセル、GS細胞等)を用いて同様の解析を行い、ES細胞で得られた結果との比較検討を行う。

(2)「ポリコーム群欠損マウスを用いた解析」 MBLRストレートノックアウトマウスにおける生殖細胞の発生分化や生殖能力の解析を行う。また、MBLR(flox/flox)マウスをTNAP-Creマウスと交配し、得られたコンディショナルノックアウトの精巣および卵巣を経時的に解析して、生殖細胞分化や生殖能力への影響を調べる。さらに、遺伝子発現プロファイルのRNA-seqデータを取って減数分裂遺伝子の発現変化に注目した解析を行い、表現型との因果関係を確かめる。L3mbtl2(flox/flox)マウスについても同様の解析を行い、ポリコーム群複合体としての機能と作用機序の全容解明を目指す。

(3)「転写因子Mga欠損マウスの作成」 Mgaのコンディショナル欠損マウスを作成し、(2)と同様の交配・表現型解析を行う。またMgaが欠損した生殖細胞において、ポリコーム群の標的遺伝子への結合様式がどのように変化するかを調べ、転写因子とポリコーム群のクロストークの全容解明を目指す。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2015 2014

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (3件)

  • [雑誌論文] Gene regulation. Transcribed enhancers lead waves of coordinated transcription in transitioning mammalian cells.2015

    • 著者名/発表者名
      Arner E, Daub CO, Vitting-Seerup K, Andersson R, Lilje B, Drablos F, Lennartsson A, Ronnerblad M, Hrydziuszko O, Vitezic M, Freeman TC, Alhendi AM, Arner P, Axton R, Baillie JK, Beckhouse A, Bodega B, Briggs J, Brombacher F, Davis M, Detmar M, Ehrlund A, Endoh M, et al.
    • 雑誌名

      Science

      巻: 347 ページ: 1010-1014

    • DOI

      10.1126/science.1259418.

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [学会発表] MBLR-PRC1ポリコーム複合体による減数分裂遺伝子のエピジェネティック制御2014

    • 著者名/発表者名
      遠藤充浩、信賀順、遠藤高帆、古関明彦
    • 学会等名
      第37回日本分子生物学会年会
    • 発表場所
      パシフィコ横浜(神奈川県横浜市)
    • 年月日
      2014-11-27
  • [学会発表] Role of an atypical Polycomb Repressive Complex 1 (PRC1) involving MBLR and Mga/Max in repressing meiosis-related genes in mouse ES cells2014

    • 著者名/発表者名
      遠藤充浩、信賀順、遠藤高帆、古関明彦
    • 学会等名
      第12回幹細胞シンポジウム
    • 発表場所
      九州大学医学部百年講堂(福岡県福岡市)
    • 年月日
      2014-05-30 – 2014-05-31
  • [学会発表] MBLR-assembled atypical Polycomb Repressive Complex 1 (PRC1) is directed to meiosis-related genes by Max/Mga and drives PRC2 recruitment2014

    • 著者名/発表者名
      遠藤充浩、信賀順、遠藤高帆、古関明彦
    • 学会等名
      第8回日本エピジェネティクス研究会年会
    • 発表場所
      伊藤国際学術研究センター(東京都文京区)
    • 年月日
      2014-05-25 – 2014-05-27

URL: 

公開日: 2016-06-01  

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