研究実績の概要 |
接着斑形成と細胞仮足の伸展は、がん細胞の運動亢進や神経突起伸長に重要である。細胞仮足内では、アクチン線維が中心に向かって絶え間なく移動する求心性アクチン流動が存在する。この流動と接着斑が連結すると、流動に伴う力が、接着斑、更には細胞外へ作用すると考えられているが、どのように連結しているかはほとんどわかっていない。単分子イメージングはアクチン流動、接着斑、細胞外基質 (ECM) の変位を分子レベルで高精度に捉える強力なツールである。私は、高効率・高時空間分解能で細胞内単分子観察を実現するeSiMS 顕微鏡法 (easy, efficient, electroporation-based Single-Molecule Speckle Microscopy) を開発し、細胞仮足でアクチン流動と接着斑の連関を明らかにした。その結果、ラメリポディア内の接着斑前方では、アクチン線維は接着斑に集まるように流動することを見出した (Yamashiro et al. MBoC 25:1010, 2014)。接着斑分子ビンキュリン、タリン、インテグリンβ1を一分子観察すると、接着斑前方において、これらの分子はアクチンネットワークに会合して接着斑に集められるように流動しており、流動力が接着斑分子を接着斑方向に掻き集めるように働くことが示唆された。さらにコラーゲンゲル上培養系において、上皮細胞のラメリポディア近傍で、コラーゲン線維がアクチン流動と同一方向に移動することを観察した。これらの結果より、ラメリポディアでは、アクチン流動が接着分子を介してECMと連結し、接着斑がアクチン流動を引き寄せることでこれらの分子を接着斑の方向へ掴み取ることが示唆された。細胞仮足が‘つかみ取る’動きは、ECMの再配向に寄与する可能性があり、ECMリモデリングを伴う生体運動や病態生理の理解に繋がることが期待できる。
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