研究領域 | 上皮管腔組織の形成・維持と破綻における極性シグナル制御の分子基盤の確立 |
研究課題/領域番号 |
26112713
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
池ノ内 順一 九州大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (10500051)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 上皮細胞 / 細胞膜脂質 / 細胞極性 / スフィンゴミエリン |
研究実績の概要 |
私たち多細胞生物のからだは、上皮細胞と間葉細胞から構成される。上皮細胞は恒常的にアピカル膜とバソラテラル膜という機能も構成要素も異なる細胞膜ドメインを有しており、これによって、からだの内外で方向性を持った物質の輸送が可能となっている。上皮細胞では、アピカル膜とバソラテラル膜では、タンパク質に加えて、細胞膜を構成する脂質が異なることが古くから知られているが、その生理学的な意義は、明らかになっていない。私は、この点に興味を持ち、まず上皮細胞のアピカル膜およびバソラテラル膜を単離して、その脂質組成を質量分析により解析する手法を確立した(Ikenouchi et al. J Biol Chem 2012)。これらの成果を元に、細胞膜脂質が上皮細胞の極性や上皮管腔構造形成に果たす役割について、解析を行った。その結果、上皮細胞のアピカル膜に存在する微絨毛にスフィンゴミエリン(SM)が高度に集積していること、SMを消失させると微絨毛構造が破綻すること(Ikenouchi et al., J Cell Sci 2013)、更に上皮細胞の三次元培養の際にSMの生合成を阻害すると異常な管腔を持つCystが形成されること(未発表)を見出した。また上皮細胞と間葉細胞の細胞膜脂質の比較から、上皮細胞特異的な細胞膜脂質を同定した。 本年度は、上皮細胞特異的な細胞膜脂質の解析に於いて研究の進展があった。上皮細胞に特異的に存在しているスフィンゴミエリン分子種を同定し、またその脂質の合成に関わる酵素を2つの候補に絞り込むことできた。現在、これらの酵素に対する抗体を作製しており、来年度、上皮細胞特異的な脂質の機能解析を行いたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、上皮細胞特異的な脂質分子種の機能解析に向けて、脂質分子種およびその酵素の同定が着実に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
培養上皮細胞において、これまでの研究に於いて同定した上皮細胞特異的な脂質代謝酵素の発現を消失させた細胞株を樹立し、細胞接着や上皮管腔形成に対する影響を観察する。また、並行してこのような上皮細胞特異的な脂質分子種と協働する膜タンパク質の同定を行う。
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