研究領域 | 上皮管腔組織の形成・維持と破綻における極性シグナル制御の分子基盤の確立 |
研究課題/領域番号 |
26112715
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
佐々木 洋 大阪大学, 生命機能研究科, 教授 (10211939)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 細胞競合 / 細胞間コミュニケーション / 上皮細胞 / 内胚葉 |
研究実績の概要 |
発生中の胚の中では、組織内の細胞はダイナミックに変動しており、隣接細胞が互いにコミュニケーションして、その動態を制御することで組織を正確に作り上げています。我々は細胞間コミュニケーションの仕組みを明らかにするために、マウス胚線維芽細胞NIH3T3を用いて細胞競合の簡便なモデル系を樹立しました。この系では、Hippoシグナル経路の転写因子Teadの活性が異なる細胞を共培養すると細胞競合が起こり、その機構はMycがTead活性と協調的に作用するという、ショウジョウバエの上皮組織に類似した物であることを明らかにしました(Mamada, Sato et al J Cell Sci 2015)。マウス上皮細胞株MTD-1Aを用いて、Tead活性を増強した細胞を作成しても、細胞増殖は正常細胞と変わりませんが、Tead活性を増強した細胞と正常細胞とを共培養するとTead活性の高い細胞の増殖が選択的に促進されました。従って、Tead活性の異なる細胞間での細胞競合あるいは細胞増殖の制御は線維芽細胞に特異的なものではなく、上皮細胞にも共通した普遍的なものであると考えられた。 一方、GFPとYapの融合タンパク質を発現するMTD-1A細胞を樹立し、Yapの核移行の変動をライブイメージングで観察したところ、Yapの細胞内局在はダイナミックに変動しているが、時間の経過と共に隣接細胞間では変動の様子がそろってゆく傾向があることが明らかになった。すなわち、隣接した細胞間ではTead活性を認識比較するしくみがあり、正常な細胞間では、Tead活性が協調するのに対し、Tead活性を操作した細胞間では細胞競合が起こることが分った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
上皮細胞のYap動態の記録において、核標識細胞において細胞毒性が見られ、核非標識細胞を用いてYapの動態を記録し直す必要が出たため、4か月間研究が遅延した。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究成果を踏まえ、今後は以下の研究を行う。 (1)線維芽細胞における細胞競合機構は、上皮シートと共通していることが分ったので、取扱いの容易な線維芽細胞を用いて、細胞競合関連遺伝子のスクリーニングを行い、細胞競合機構の解明を進める。 (2)Tead活性の違いを認識した細胞増殖の制御や細胞競合が普遍的なものであるかどうかを明らかにするために、マウス胚において、Tead活性の異なる細胞をモザイク状に持つ胚を作製し、その挙動を解析する。
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