• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2014 年度 実績報告書

上皮管腔組織における基底膜形成メカニズムの解明

公募研究

研究領域上皮管腔組織の形成・維持と破綻における極性シグナル制御の分子基盤の確立
研究課題/領域番号 26112718
研究機関東京薬科大学

研究代表者

吉川 大和  東京薬科大学, 薬学部, 准教授 (20274227)

研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2016-03-31
キーワード基底膜 / 細胞接着 / ラミニン / ルテラン / インテグリン
研究実績の概要

基底膜の主要な分子であるラミニンは、α、β、γの3つの鎖からなるヘテロ3量体の糖タンパク質で、α鎖が5種類、β鎖が3種類、γ鎖が3種類存在し、それらの組み合わせによって、現在までに18種類の組み合わせが報告されている。上皮管腔組織の基底膜における主要なアイソフォームは、α5鎖、β1鎖、γ1鎖からなるラミニン-511であることが知られている。このラミニン-511は、上皮管腔組織において上皮細胞を秩序よく接着させているにもかかわらず、癌化した細胞では接着を破綻させ運動を促進させる。しかしながら、このラミニン-511に対する正常上皮細胞と癌細胞の挙動の違い、および基底膜形成のメカニズムについては十分に明らかになっていない。これまでに次のことを明らかにした。1.基底膜は上皮細胞と結合組織を繋ぐ構造体であり、上皮細胞は基底膜と結合するための受容体を細胞表面に発現している。この受容体の中で、ラミニン-511に結合するルテランが、細胞表面からMT1-MMPと未知のプロテアーゼによって切断され、細胞表面からシェディングされることを見出した 。このシェディングされたルテランは、切断後もラミニンに対する結合活性を維持し、上皮細胞と基底膜の接着に影響することが示唆された。また、シェディングされたルテランは血漿中に検出され、新たな腫瘍マーカーとして期待された。2.基底膜の主要な成分であるラミニン-511は、正常の上皮細胞を基底膜に安定的に接着させているにもかかわらず、癌細胞に対してはその運動を促進するという二面性の機能をin vitroにおいて示している。私達は、ラミニン-511に接着した細胞を、細胞運動しやすい状態に転換する因子の探索を行い、発癌プロモーターであるPhorbol 12-myristate 13-acetateが細胞運動を促進することを見出した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

平成26年度は、(1)ラミニンα5鎖に対する細胞接着が管腔形成に与える影響の解明および、(2)ラミニンα5鎖の自己会合に関わるドメインの探索を目的として研究を遂行した。(1) は、ラミニンα5鎖の特異的な受容体であるルテランがプロテアーゼによって切断され細胞表面から放出されることを見出したが、この切断が管腔形成に及ぼす影響については明らかになっていない。また、発癌プロモーターであるPhorbol 12-myristate 13-acetateがラミニン-511上での細胞運動を促進することを見出したが、この細胞運動と管腔形成を関連付けることができていない。(2)は、ドメインを欠損させたラミニンα5鎖N末端の組換え蛋白質を作製し大量調製に成功したが、自己会合に関わるドメインの同定まで至っていない。この組換え蛋白質の調製に平行して、ラミニンα5鎖N末端領域のアミノ酸配列を網羅するペプチドの合成を行っている。

今後の研究の推進方策

昨年度に引き続き、(1)ラミニンα5鎖に対する細胞接着が管腔形成に与える影響の解明および、(2)ラミニンα5鎖の自己会合に関わるドメインの探索を行う。さらに、(1)は細胞接着の破綻が管腔形成に与える影響の解明、(2)は自己会合に関わるラミニンα5鎖N末端のアミノ酸配列の同定を行う。これまでの研究で、細胞表面から放出されたルテランがラミニン-511への結合能を持つことを明らかにした。この放出されたルテランが、細胞の基底膜への接着を阻害するとともに、基底膜形成を阻害する可能性が高く、さらに管腔形成が抑制されると予想される。ラミニンの受容体側から、基底膜および管腔形成のメカニズムにアプローチする。また、ラミニン-511上で細胞運動を促進する条件を見出してきている。管腔形成の過程で細胞運動を促進させ、管腔および基底膜形成における細胞運動の役割を明らかにする。そして、ラミニンα5鎖N末端の組換え蛋白質を管腔形成の培養系に添加し、管腔および基底膜形成に必要なドメインを同定する。さらに同定されたドメインのアミノ酸配列を網羅した合成ペプチドを管腔形成の培養系に添加し、管腔および基底膜形成に必要なアミノ酸配列を同定する。

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2015 2014 その他

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (4件) 備考 (2件)

  • [雑誌論文] Biological activities of the homologous loop regions in the laminin alpha chain LG modules. Biochemistry.2014

    • 著者名/発表者名
      Katagiri, F., Hara, T., Yamada, Y., Urushibata, S., Hozumi, K., Kikkawa, Y., Nomizu, M.
    • 雑誌名

      Biochemistry

      巻: 53 ページ: 3699-3708

    • DOI

      10.1021/bi5003822.

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Screening of integrin-binding peptides in a laminin peptide library derived from the mouse laminin beta chain short arm regions.2014

    • 著者名/発表者名
      Katagiri, F., Takagi, M., Nakamura, M., Tanaka, Y., Hozumi, K., Kikkawa, Y., Nomizu, M.
    • 雑誌名

      Arch Biochem Biophys

      巻: 550-551 ページ: 33-41

    • DOI

      10.1016/j.abb.2014.04.008.

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Soluble Lutheran/basal cell adhesion molecule is detectable in plasma of hepatocellular carcinoma patients and modulates cellular interaction with laminin-511 in vitro.2014

    • 著者名/発表者名
      Kikkawa, Y., Miwa, T., Tanimizu, N., Kadoya, Y., Ogawa, T., Katagiri, F., Hozumi, K., Nomizu, M., Mizuguchi, T., Hirata, K., Mitaka, T.
    • 雑誌名

      Exp Cell Res

      巻: 328 ページ: 197-206

    • DOI

      10.1016/j.yexcr.2014.07.012.

    • 査読あり
  • [学会発表] 癌細胞の運動における基底膜成分(ラミニン-511)の役割2015

    • 著者名/発表者名
      吉川 大和
    • 学会等名
      新学術領域研究「がん研究分野の特性等を踏まえた支援活動」公開シンポジウム
    • 発表場所
      一橋講堂、東京
    • 年月日
      2015-01-27 – 2015-01-28
  • [学会発表] Phorbol ester alters cell migration of lung adenocarcinoma on laminin-511.2014

    • 著者名/発表者名
      Ikari, K., Fujii, S., Katagiri, F., Hozumi, K., Nomizu, M., Kikkawa, Y.
    • 学会等名
      The 2014 ascb/ifcb meeting
    • 発表場所
      Pennsylvania Convention Center, Philadelphia (USA)
    • 年月日
      2014-12-06 – 2014-12-10
  • [学会発表] Soluble Lutheran glycoprotein/basal cell adhesion molecule is detectable in plasma of hepatocellular carcinoma patiets and modulates cellular interaction with laminin-511 in vitro.2014

    • 著者名/発表者名
      Kikkawa, Y., Miwa, T., Tanimizu, N., Kadoya, Y., Ogawa, T., Katagiri, F., Hozumi, K., Nomizu, M., Mizuguchi, T., Hirata, K., Mitaka, T.
    • 学会等名
      American Society for Matrix Biology Biennial Meeting 2014
    • 発表場所
      Marriott Key center, Cleveland (USA)
    • 年月日
      2014-10-12 – 2014-10-15
  • [学会発表] 上皮管腔組織における基底膜形成メカニズムの解明2014

    • 著者名/発表者名
      吉川 大和
    • 学会等名
      新学術領域研究「上皮管腔組織形成」第4回領域会議
    • 発表場所
      九州大学、福岡市
    • 年月日
      2014-07-18 – 2014-07-19
  • [備考] 東京薬科大学 薬学部 病態生化学

    • URL

      http://www.ps.toyaku.ac.jp/~nomizu/

  • [備考] 吉川大和

    • URL

      http://researchmap.jp/yamatokikkawa/

URL: 

公開日: 2016-06-01  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi