研究領域 | 上皮管腔組織の形成・維持と破綻における極性シグナル制御の分子基盤の確立 |
研究課題/領域番号 |
26112719
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研究機関 | 金沢医科大学 |
研究代表者 |
清川 悦子 金沢医科大学, 医学部, 教授 (80300929)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ライブイメージング |
研究実績の概要 |
癌で変異の見られる活性化型K-Rasの発現により、MDCK細胞からなる類器官が回転するこれまでの観察を発展させ、脈管内の腫瘍塊の動態を生体内で観察することを目的とした。まずマウス由来の大腸癌細胞colon26細胞を脾臓に注入し肝臓に移植させる系をこれまでの報告を元に確立した。病理標本では肝臓での腫瘍を確認できるのだが、門脈経由で来ているはずの腫瘍細胞が血管内を移動する画像を2光子励起顕微鏡で取得することは出来なかった。またFRETバイオセンサーを発現する同細胞株を直接肝臓に打ち込み2光子励起顕微鏡にて観察する系も構築し、動画取得に成功した。しかし、colob26細胞はその場での突起形成はするものの移動しなかった。同細胞をマトリゲルに打ち込んで炭酸ガス存在下で汎用顕微鏡で観察すると、細胞形態は円形と紡錘形を呈する2群あることがわかった。肝臓での腫瘍細胞は円形細胞が優位であり、試験管内環境で肝臓の環境をある程度は模していると考えられた。マトリゲル内では24-48時間の観察が可能であるが、その間移動する細胞も観察されたが、ガラスやプラスチック上で培養した場合に比べ、移動速度や分裂頻度は低いことから、肝臓での限られた時間内の観察で移動をみるには何らかの工夫が必要であることがわかった。血管のよりよい観察方法として現在のところ、皮弁法の条件検討を行っている。 これまで、成熟した類器官で細胞内局在を変化させることで細胞内情報伝達の活性化パターンを変化させる系を構築してきた。先の新学術領域では、これまでアピカル・ラテラル側にしか蛋白質を局在させることが出来なかったところを、基底膜に局在させる手法を開発した。但し、局在化の頻度が低いことが問題であったので、引き続き基底膜への局在効率を高めるためのプラスミド構築を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの経験から、生体内でのがん細胞は試験管内に比べて移動(浸潤)が遅く、生体内での観察時間を考慮すると、その瞬間をとらえることは困難であることは当初から予想されていたが、概ね予想通りであった。
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今後の研究の推進方策 |
2光子顕微鏡は設置されて1年であり、セットアップ期間を含め、マウス手術や観察方法になれる期間が必要であった。次年度はその経験を活かして、長期イメージング方法を確立したい。 また九州大学の今村博士のシミュレーションの結果より、類器官内での不均衡が回転をうむ可能性が高いことが示唆されたことから、当初計画していた類器官形成の早期と後期の発現遺伝子の比較という方法では、回転を生む機構を明らかに出来ない可能性が高まった。データは既に得ているが、解析する必要性があるのか検討する必要がある。
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