公募研究
昨年度は木部道管において局所的に活性化するROP11とその下流で機能するスキャッフォールドタンパク質MIDD1に関してインタラクトームのデータベースを用いて相互作用因子を探索し、複数の候補遺伝子を同定しました。これらのタンパク質の機能を解析したところ、新規の微小管付随タンパク質、およびROP GTPaseのエフェクターであることが分かりました。これらのタンパク質の過剰発現および発現抑制は後生木部道管の壁孔の形態を著しく変化させました。さらに、人為的に再構築したROP11の局所活性化ドメインの形状にも著しく影響したことから、これらのタンパク質はROP11の局所的な活性化に作用することにより、壁孔の形態を制御していると考えられます。微小管付随タンパク質に関して詳しく解析したところ、このタンパク質は微小管の脱重合を阻害することにより表層微小管を安定化し、その量を増加させることが分かりました。さらに、このタンパク質は細胞膜にも相互作用することにより、表層微小管を細胞膜へより強固にアンカーしていると考えられます。このタンパク質の発現レベルが壁孔の形態に影響することを考慮すると、このタンパク質は微小管のダイナミクスに作用することにより、微小管の重合を介して細胞内の空間制御に貢献していると考えられます。これらの成果に加え、細胞骨格を介して細胞内構造を制御する新規の転写ネットワークを明らかにするために、細胞壁形成に関わる複数の転写因子を導入した培養細胞系を確立した他、転写因子発現ライブラリーを用い、新規の転写因子スクリーニング系を整備しました。
2: おおむね順調に進展している
本研究課題は木部道管をモデルとして細胞内の空間制御機構を明らかにすることを目標にしています。昨年度はROP11の下流で機能する遺伝子を同定することに成功しました。そのうちの一つは新規の微小管付随タンパク質であることが分かり、微小管のダイナミクスの制御を介して細胞壁の沈着パターンに貢献していることが分かりました。他の制御因子の解析も併せて進めることにより、細胞内の空間制御機構に関して重要な知見が得られる見込みです。細胞骨格を介した転写因子スクリーニングの準備も進んでおり、総じて順調に進捗していると言えます。
今後は同定した細胞骨格およびROP GTPaseの新規制御因子の機能解析を進めます。新規の転写因子スクリーニング系を用いて、細胞骨格を介して細胞内空間を制御する新規の転写ネットワークを明らかにします。候補の転写因子に関しては各転写因子の変異体、過剰発現に加え、CRES-T法を用いたドミナントリプレッションにより多角的に解析し、その下流の遺伝子をRNAseqにより解析します。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (9件) (うち招待講演 3件) 図書 (1件)
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