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2014 年度 実績報告書

植物の器官形成における細胞分裂停止のロジック

公募研究

研究領域植物発生ロジックの多元的開拓
研究課題/領域番号 26113509
研究機関名古屋大学

研究代表者

伊藤 正樹  名古屋大学, 生命農学研究科, 准教授 (10242851)

研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2016-03-31
キーワード細胞分裂 / 細胞周期 / Myb転写因子 / シロイヌナズナ
研究実績の概要

(1) 転写抑制因子として働くR1R2R3-Myb(抑制型MYB3R)は、i) 発生が進んだ器官において分裂を停止した細胞においてG2/M期遺伝子群の発現を抑制すること、またii) 細胞周期中でG2/M期以外の時期に転写を抑制し、G2/M期遺伝子の発現のタイミングを限定していることを明らかにした。(2) ChIPseq解析や免疫沈降法による複合体解析の結果、抑制型MYB3RはG1/S期制御に重要な転写因子E2FおよびE2F と相互作用するRBR1などを含むタンパク質複合体を形成していることが予想された。(3) MYB3R3-GR(グルココルチコイド受容体)を発現する抑制型MYB3R変異体を用いて、MYB3R3の働きを葉の発生の任意の段階でONあるいはOFFにする系を確立した。この系を使った標的遺伝子の発現解析から、葉におけるMYB3R3の転写抑制にはMYB3R3が継続的に発現する必要はなく、一度確立した転写抑制状態は、MYB3R3の発現が無くても維持されることがわかった。(4) MYB3Rの標的遺伝子の1つに、細胞分裂を負に制御する新奇GRAS型転写因子があること、この因子がE2Fと関連して機能し、CDK阻害因子であるSMRの転写を活性化していることが示唆された。(5) 細胞周期依存的なタンパク質分解の制御に重要なAPC/Cユビキチンリガーゼは阻害タンパク質(GIG1とUVI4)による負の制御を受けている。これらの因子の遺伝学的解析からGIG1とUVI4はAPC/Cを通じて異なる標的タンパク質に影響を与えることにより、異なった細胞周期や発生の局面において分裂やDNA倍加を制御していることが示唆された。(6) GIG1とUVI4は細胞周期中で発現するステージが異なっており、この発現の違いがそれぞれの機能の違いと関連していることが示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

抑制型MYB3RがG2/M期遺伝子を抑制する意義について重要な情報が得られた。つまり、発生が進んだ器官において分裂を停止した細胞、また分裂の細胞では細胞周期のG2/M期以外の時期に転写を抑制していることがわかった。今後、このような抑制型MYB3Rの機能を前提にして、メカニズムの解析を進めていく。また、MYB3R3-GRを用いた系により、抑制型MYB3Rの作用機構について重要な知見が得られた。今回の結果は、発生の段階の一時期にMYB3R3が作用し、標的遺伝子のクロマチン状態を変化させることがその後の継続的な転写抑制に重要であることを示唆している。今後、実際のクロマチン状態の変化について解析を進める足掛かりとなった。活性化型および抑制型MYB3Rが複合体を形成していることを明らかにし、抑制型MYB3Rについては網羅的な標的遺伝子の同定にも成功した。しかし、活性化型MYB3Rについては発現量が低い問題などがあり、十分に解析を進められておらず、細胞周期や発生における標的遺伝子との結合の動態についても今後進めていく必要がある。

今後の研究の推進方策

これまでの研究の進捗状況を踏まえ以下のように計画している。
(1) 抑制型Mybが作用する発生ステージ  根および葉の発生において、抑制型Mybの作用する発生ステージに違いがあるかどうかを検討する。様々なステージまで成長させたMYB3R3-GR植物の芽生えにDEX処理を行い、標的遺伝子の発現レベルが低下するかどうかRT-PCRにより調べる。
(2) 標的DNAとの結合状態  活性化型Mybと抑制型Mybが発生の進行に伴い、どのように標的DNAへの結合を変化させているのかを調べる。GFP融合型MYB3R を自身のプロモーターの働きで発現する形質転換体(MYB3R3-GFPおよびMYB3R4-GFP)を用いて抗GFP抗体によるクロマチン免疫沈降(ChIP)を行う。また、標的遺伝子のクロマチン状態を種々のヒストン修飾をChIP方などにより調べることにより解析する。
(3) タンパク質複合体の形成  MYB3R3-GFPおよびMYB3R4-GFP形質転換体を用い、抗GFP抗体による共免疫沈降を行う。沈殿物を質量分析に供することにより、タンパク質複合体の構成因子を同定する。新たに同定された相互作用因子については、逆遺伝学的なアプローチにより機能解析を行う。
(4) 転写ネットワークによる細胞分裂制御  MYB3Rの直接の標的遺伝子の候補には、転写調節因子をコードすると考えられる遺伝子が多く存在する。このような因子群は細胞分裂の制御に関してMYB3Rの下流に転写制御ネットワークを形成していると考えられる。このようなネットワークの実体と細胞分裂における役割を明らかにする。これまでにGRASファミリー転写因子E1MがMYB3Rの制御下でG2/M期特異的に発現することを明らかにしている。そこで、E1Mの下流に存在する因子群を同定し、ネットワークの解明を行う。E1Mおよび下流因子の機能解析を行い、細胞分裂制御においてネットワークの持つ意義を明らかにする。

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2015 2014

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (4件)

  • [雑誌論文] Reprogramming of plant cells induced by 6b oncoproteins from the plant pathogen Agrobacterium.2015

    • 著者名/発表者名
      Ito, M., Machida, Y.
    • 雑誌名

      J. Plant Res.

      巻: 128 ページ: 423-435

    • DOI

      10.1007/s10265-014-0694-3

    • 査読あり
  • [雑誌論文] G2/M phase-specific transcription factor MYB3R4 and MAPKKK ANP3 for execution of cytokinesis in Arabidopsis thaliana.2015

    • 著者名/発表者名
      Saito, T., Fujikawa, H., Haga, N., Suzuki, T., Machida, Y., Ito, M.
    • 雑誌名

      Plant Signal. Behav.

      巻: 未定 ページ: 未定

    • DOI

      10.4161/15592324.2014.990817

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Rapid elimination of the persistent synergid through a cell-fusion for polytubey block.2015

    • 著者名/発表者名
      Maruyama, D., Völz, R., Takeuchi, H., Mori, T., Igawa, T., Kurihara, D., Kawashima, T., Ueda, M., Ito, M., Umeda, M., Nishikawa, S., Groß-Hardt, R., Higashiyama, T.
    • 雑誌名

      Cell

      巻: 未定 ページ: 未定

    • DOI

      Not assigned yet

    • 査読あり
  • [雑誌論文] The carboxyl-terminal tail of the stalk of Arabidopsis NACK1/HINKEL kinesin is required for its localization to the cell plate formation site.2015

    • 著者名/発表者名
      Sasabe, M., Ishibashi, N., Haruta, T., Minami, A., Kurihara, D., Higashiyama, T., Nishihama, R., Ito, M., Machida, Y.
    • 雑誌名

      J. Plant Res.

      巻: 128 ページ: 327-336

    • DOI

      10.1007/s10265-014-0687-2

    • 査読あり
  • [学会発表] イネ体細胞のDNA倍数性に影響を与える遺伝子の解析2015

    • 著者名/発表者名
      栂根美佳、井上慎子、栂根一夫、寺内良平、永澤信洋、前川雅彦、伊藤正樹
    • 学会等名
      第56回日本植物生理学会年会
    • 発表場所
      東京
    • 年月日
      2015-03-18
  • [学会発表] GRASファミリー転写因子によるシロイヌナズナの細胞分裂と核内倍加の制御2015

    • 著者名/発表者名
      鈴木俊哉,Christian Breuer,石田喬志,鈴木孝征,東山哲也,杉本慶子,伊藤正樹
    • 学会等名
      第56回日本植物生理学会年会
    • 発表場所
      東京
    • 年月日
      2015-03-18
  • [学会発表] イネ体細胞のDNA倍数性に影響を与える遺伝子の解析2014

    • 著者名/発表者名
      栂根美佳、井上慎子、栂根一夫、寺内良平、永澤信洋、前川雅彦、伊藤正樹
    • 学会等名
      第37回日本分子生物学会年会
    • 発表場所
      横浜
    • 年月日
      2014-11-25
  • [学会発表] 植物特異的なGRASファミリー転写因子による細胞周期の制御2014

    • 著者名/発表者名
      鈴木俊哉,Christian Breuer,石田喬志,鈴木孝征,東山哲也,杉本慶子,伊藤正樹
    • 学会等名
      第37回日本分子生物学会年会
    • 発表場所
      横浜
    • 年月日
      2014-11-25

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公開日: 2016-06-01  

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