研究実績の概要 |
真正双子葉植物に広く現れる5数性と4数性を決める花器官配置、及び、花器官の数の確率性の発生学的基盤の解明を目標とし、モデル植物の分子的知見と数理モデルの予測の対応づけと多様な植物の野外調査とを融合した研究を推進した。 正確性:4数性と5数性の同心円状配置(whorl)が現れる発生学的条件を数理モデルの数値計算と解析計算から示した。このモデルは、5数性を示すナデシコ科の萼および花弁原基の配置を定量的に再現する。対応する分子生物学的な仕組みとして、オーキシンの表層から内層へ流出 (NPY/MAB, 他)、および、器官の境界形成(CUC, 他)を予測し、シロイヌナズナArabidopsisなどにおけるこれらの遺伝子変異体における花器官配置との整合性も確認できた(PLOS Comp. Biol. 2015)。 確率性:同種の集団中に於ける花器官数の確率的なばらつきの野外調査を進めて、その統計解析から多くの種に共通する花器官数の頻度分布法則を発見した。キンポウゲ科の花被片数のばらつきの発生学的メカニズムとして、器官配置の数理モデルからホメオシス(花器官原基の発生運命の確率的変化)を予測した(Frontiers Plant Sci. 2014)。 対称性:上述の器官配置のモデルを拡張して、左右対称性および回転対称性を切り替える発生学的性質を探索した。その結果、キンギョソウAntirrhinum の野生型(左右対称)とCYCLOIDEA変異体(回転対称)の萼片と花弁の原基配置とその出現順序の再現に成功した。
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