公募研究
現在までに、サイトカイニンの初期応答に関わる転写因子Type-B ARRs (Arabidopsis Response Regulators) が根の移行領域で発現することで、根端メリステムサイズを決定していると考えられている。しかしながら、ARRsがどのように空間的に発現制御され、どのような下流イベントを統合的に制御しているのかは不明である。そこで本研究では、根端メリステムのサイズを制御する分子機構を明らかにすることで、外部環境に応じた根の成長プログラムを理解しようとしている。初めに、Type-B ARRの分解制御に関与するF-boxタンパク質について解析を行なったところ、Type-B ARRと同様に根の移行領域で蓄積することを明らかにした。さらに、サイトカイニンを処理することで移行領域でのF-box遺伝子の発現が低下したことから、このタンパク質はサイトカイニンの量的増減に応じて移行領域でのサイトカイニンシグナルを鋭敏に変化させる重要な役割を担っていることが明らかになった。次に、環境に応じた根端メリステムサイズの制御機構を探るため、DNA損傷剤を用いてその分子機構を調べたところ、DNA損傷シグナルの情報伝達系を介してサイトカイニン生合成遺伝子の発現が誘導され、移行領域でサイトカイニンが高蓄積することが明らかになった。この結果から、環境ストレスに応じた根端メリステムサイズの制御に、根の移行領域でのde novoのサイトカイニン合成が重要な役割を果たしていることが明らかになった。
2: おおむね順調に進展している
Type-B ARRsの空間的発現制御にタンパク質分解との関連性が見えてきたので、24年度以降の展開が非常に興味深くなってきている。また、環境ストレスに応じた根端メリステムサイズの制御にもサイトカイニンが重要な役割を果たしていることを新たに見出したことから、おおむね順調に進行している。
現在までに、根の移行領域におけるType-B ARRの標的遺伝子は、SHY2(オーキシンシグナルの抑制)とCCS52A1(細胞周期の進行阻害)しか知られていない。根端メリステムサイズの決定機構を包括的に理解するためには、ARRsの標的遺伝子を網羅的に同定し、細胞分裂から分化への移行を制御する各種イベントを分子レベルで捉える必要がある。そこで、ARRsの直接の標的遺伝子をマイクロアレイ、ChIP-seq解析により明らかにし、根端メリステムでの発現パターンや欠損株での根端メリステムの表現型解析を進めていく。さらに、ARRs遺伝子の空間的な発現制御機構を明らかにするために、ARRの遺伝子発現を制御するシス領域を同定し、転写制御因子を明らかにする。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (2件) (うち謝辞記載あり 2件) 学会発表 (6件) (うち招待講演 1件) 図書 (1件)
Plant Signaling & Behavior
巻: 9 ページ: e29396
10.4161/psb.29396
Plant Cell
巻: 26 ページ: 296-309
10.1105/tpc.113.118943