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2014 年度 実績報告書

代謝物多様性獲得によって駆動された植物ボディプラン進化の解明

公募研究

研究領域植物発生ロジックの多元的開拓
研究課題/領域番号 26113518
研究機関大阪府立大学

研究代表者

太田 大策  大阪府立大学, 生命環境科学研究科(系), 教授 (10305659)

研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2016-03-31
キーワード植物 / 発生・分化 / 脂質 / 代謝 / メタボロミクス
研究実績の概要

適正な膜ステロール組成は植物の発生・発達に不可欠とされているが,個々のステロールが担う役割は不明である.植物ステロールは側鎖C24位にメチル基を持つC24メチルステロールと,エチル基を持つC24エチルステロールに大別される.C24位メチル化レベルは2段階のメチル基転移酵素反応 (SMT) で決まる.第1段階SMT1は生物界に広く保存され,第2段階は植物特異的SMT2 (シロイヌナズナではSMT2, SMT3) が触媒する.シロイヌナズナsmt2smt3二重変異株は,C24メチルステロール産生を保持するが,C24エチルステロールを失い重篤な矮性となる.
これまでに,植物の発生・発達過程には,C24エチルステロールの存在が必須であることを示した.smt2smt3二重変異体では根幹始原細胞の並層分裂方向喪失,分裂準備体(PPB)の異常と組織形成破綻,重力屈性喪失,根端オーキシン分布異常,オーキシン排出輸送体PIN2局在異常,PIN2タンパク質のエンドサイトシスリサイクリング阻害, PIN2リサイクリングに関与するCLASPの細胞内局在の異常を明らかにした.また,smt2smt3変異体由来培養根の異常表現型(二次根発達の阻害,オーキシンの組織内分布の異常)を外生24エチルステロール添加によって回復させる実験系を新規に構築した.今後は,培養根実験系を中心として,オーキシンの生合成・輸送,オーキシン関与によって駆動される細胞分裂過程への関与を手がかりとして,C24エチルステロールの生理機能解明を目指す.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

C24エチルステロールが担う未知の生理機能解明を目的として研究を進め, C24エチルステロールは,時間的・空間的に精緻に制御されたオーキシン生合成と輸送,およびオーキシン関与の細胞分裂過程の制御あるいは成立に必須であることを明らかにした.その過程で培養根を用いた新たな実験系を確立し,smt2smt3変異体で認められるオーキシン輸送と二次根発達の異常を,外生C24エチルステロール添加によって回復できることを初めて明らかにした.この実験系によって,C24エチルステロール欠損によって失われた正常な細胞機能の探索が可能となった.また,オーキシン関連の発生・発達過程を解析するため,下記レポーター遺伝子を発現する系統を二重変異体(SMT2/smt2-smt3/smt3) バックグラウンドで準備することができた. 1)オーキシン輸送,組織内分布を解析するためのDR5:GUS,PIN2promoter:PIN2-GFP,DR5rev:GFP,PIN1promoter:PIN1-GFP,PIN7promoter-PIN7-GFPレポーター発現系統.2)オーキシン生合成遺伝子(TAA1,YUC1,YUC4,YUC7,YUC9)promoter制御下でEGFPを発現する系統.3)細胞骨格タンパク質局在性解析のため,CLASPpro:CLASP-GFP,SNX1pro:SNX1-GFP,SNX1pro:SNX1-RFP,CLASPpromoter:GFP/pUBQ1:mRFP-betaTubulin6.4)根冠部の細胞分裂を解析するため,静止中心(QC)の維持に関与するWOX5,根幹細胞維持に関わるPLETHORA1とPLETHOR2のpromoterの制御下でEGFPを発現する系統.
今後,これらのレポーター発現系統の自殖後代からsmt2/smt2-smt3/smt3を選抜し,C24エチルステロールが関与する過程の解明を目指す.

今後の研究の推進方策

【オーキシン輸送と恒常性維持とC24エチルステロール】オーキシン生合成遺伝子(TAA1,YUCCA)発現レポーターを発現するsmt2smt3二重変異体,DR5:GUS, DR5rev:GFP, PIN2pro:PIN2-GFP, PIN7promoter:GUS, PIN1promoter:PIN1-GFPを発現するsmt2smt3二重変異体を樹立する.PIN2タンパク質のリサイクリング進行への関与を介してオーキシン輸送にかかわるCLASPの細胞内局在を明らかにする(CLASPpromoter:GFP-CLASP発現系統,CLASPpromoter:GFP-CLASP/pUBQ1:mRFP-betaTubulin6発現系統を用いる).

【細胞分裂・胚発生段階および根端細胞分裂への影響】根端細胞分裂の制御に関わるPLETHORA転写因子,静止中心(QC)における分化制御に関わるWOX5転写因子の発現をsmt2smt3二重変異体で明らかにし,C24エチルステロールの欠損によって破綻する過程の解明に結びつける.

【生体膜構造の検証】C24エチルステロール欠損が膜脂質配列構造に及ぼす影響の有無を検証する.ステロール生合成経路の上流位置における突然変異によって発生・発達が著しく阻害された植物体では,ステロール組成と含量が大きく変動し,細胞板の脂質配列構造が野生型と異なることが明らかになっている. smt2smt3根と野生型植物根のC24エチルステロール添加区と無添加区において,細胞板の脂質配列構造を比較する.蛍光色素di-4-ANEPPDHQ染色による脂質配列構造の蛍光顕微鏡観察系を完成させる.

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2015 2014

すべて 学会発表 (4件)

  • [学会発表] Biological implications of the differential structure modifications in phytosterol side chain2015

    • 著者名/発表者名
      Masatoshi Nakamoto, Anne-Catherine Schmit, Dimitri Heintz, Hubert Schaller, Daisaku Ohta
    • 学会等名
      日本植物生理学会
    • 発表場所
      東京農業大学
    • 年月日
      2015-03-16
  • [学会発表] Biological Implications of the differential structural modifications in phytosterol side chain2014

    • 著者名/発表者名
      Masatoshi Nakamoto, Anne-Catherine Schmit, Dimitri Heintz, Hubert Schaller, Daisaku Ohta
    • 学会等名
      The 11th International Symposium for Cytochrome P450 Biodiversity and Biotechnology
    • 発表場所
      京都国際交流会館
    • 年月日
      2014-09-24 – 2014-09-28
  • [学会発表] ステロール生合成進化がもたらした多細胞植物ボディプラン成立2014

    • 著者名/発表者名
      太田大策 中本雅俊
    • 学会等名
      日本植物学会
    • 発表場所
      明治大学
    • 年月日
      2014-09-13
  • [学会発表] C24-ethylsterolが担う必須の機能解明2014

    • 著者名/発表者名
      中本雅俊, Anne-Catherine Schmit, Dimitri Heintz, Hubert Schaller, 太田大策
    • 学会等名
      日本植物分子細胞生物学会
    • 発表場所
      いわて県民情報交流センター
    • 年月日
      2014-08-21

URL: 

公開日: 2016-06-01  

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