研究領域 | 植物発生ロジックの多元的開拓 |
研究課題/領域番号 |
26113520
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
篠原 秀文 名古屋大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (40547022)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 植物 / ペプチドホルモン / 受容体キナーゼ |
研究実績の概要 |
①網羅的結合解析による受容体未知ペプチドシグナルCEPおよびRGFの受容体同定.受容体未知なペプチドシグナルであるCEPおよびRGFについて光反応性ペプチドを作製し,受容体ライブラリーに対してフォトアフィニティーラベルによる網羅的結合実験を行った.CEPペプチドについては,CEPを直接結合する2つのLRR型受容体CEPR1およびCEPR2を同定した.またCEPペプチドが植物体全体に窒素飢餓を知らせるシグナルとして機能することを見出した.またRGFについては,現在までにRGFを直接結合する受容体を3つ同定している.受容体破壊株では,外的に投与したRGFペプチドへの感受性が著しく低下すること,変異体中の根端でのPLT2タンパク質のグラディエントが失われていることを確認しており,RGF受容体として機能していることが強く示唆されている. ②固相固定化ビーズを用いたリガンド-受容体相互作用阻害剤のケミカルスクリーニング.受容体キナーゼBAM1固定化ビーズを利用して,ビーズ表面で観察されるBAM1と蛍光標識CLE9ペプチドとの結合を阻害する低分子化合物のスクリーニングを行った.約3万種類の低分子化合物をスクリーニングした結果,BAM1とCLE9ペプチドの結合を阻害する化合物を同定した.投与実験により化合物はclv1変異体の茎頂肥大を促進すること,また結合実験によりBAM1とCLV3ペプチドの結合を特異的に阻害することが示され,茎頂分裂組織の情報伝達系に特異的に作用する化合物であることが示唆された. ③ゼニゴケ受容体キナーゼの抽出・分類とゼニゴケ受容体ライブラリーの作製.ゼニゴケゲノムデータから全受容体キナーゼ遺伝子の抽出し,シロイヌナズナ受容体キナーゼの系統樹に基づいて分類を行った.そのデータを元に,LRR型受容体キナーゼを中心として14種類の受容体キナーゼについてライブラリー化が完了した.ライブラリーは現在順次拡充中である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
①受容体ライブラリーを用いて受容体未知ペプチドシグナルCEPが直接結合する受容体キナーゼCEPR1およびCEPR2を同定し,CEPペプチドが窒素欠乏を感知し,植物体全体に窒素飢餓を知らせるシグナルとして機能するという発見に貢献し,論文として公表した. ②受容体ライブラリーを用いてCLV3ペプチドを直接受容する受容体キナーゼBAM1を同定し,CLV3ペプチドがCLV1に加えてBAM1とも直接結合し,ふたつの受容体キナーゼが協調的に機能して茎頂における幹細胞の分化と増殖のバランスを維持していることを見出し,論文として公表した. ③受容体ライブラリーを用いて根端メリステムの維持に重要なペプチドシグナルRGFを直接結合する受容体を同定した.シロイヌナズナでRGF受容体は3つ存在し,すべての受容体を破壊した3重変異体は根端メリステムが縮小する,RGFペプチドへの感受性が著しく低下する,変異体中の根端でのPLT2タンパク質のグラディエントが失われている等の表現型を示し,RGF受容体として機能していることを確認している.本件に関しての論文投稿の準備中である.
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今後の研究の推進方策 |
・RGF受容体3重変異体の形態観察やRGF感受性,PLT2タンパク質の発現領域などを確認し,すべてのRGF受容体候補が真の受容体であることを確認する. ・固定化ビーズを用いたリガンドフィッシングへチャレンジする.ターゲットとして,FLS2やPEPR1など植物免疫に関与が知られている受容体の固定化ビーズを用いて,病原菌感染葉や傷害葉の抽出液をサンプルとして通じ,植物体内で実際に機能しているフラジェリンやAtPepの成熟型構造を探る.またカンキツかいよう病菌破砕液中に含まれる新規エリシターeMaxと,その受容体候補であるReMaxをターゲットとして,ReMax固定化カラムを作製し,カンキツかいよう病菌破砕液を通し,洗浄,溶出を行い,溶出画分のMS分析を行うことで,リガンドフィッシングによるeMaxの活性本体の構造の同定を目指す. ・ゼニゴケ受容体のライブラリー化を順次進める.併せて,ゼニゴケ無性芽および胞子培養液をサンプルとした分泌型ペプチドの網羅的解析にも着手する.新たなペプチドシグナル分子が同定された場合,過剰発現および変異体の表現型の解析や,ゼニゴケ受容体ライブラリーを応用した受容体探索などを行い,ゼニゴケにおける新たなペプチドリガンド-受容体ペアの同定を目指していく.
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