研究実績の概要 |
1. 茎頂分裂組織(SAM)パターン形成: SAMパターン形成において細胞分裂(空間拡張)によるパターンの変化様式(増殖モード)が重要であることを今までに明らかにしてきたが、その制御はよくわかっていなかった。今回線形のダイナミクスを用いることにより、増殖モードはパターンの増幅速度ではなく、むしろパターン増幅が引き起こされる波数(空間周期)と強く相関することが示された。 2. 気孔パターン形成: 気孔系譜細胞の分化制御ダイナミクスの数理モデルを、実験結果に基づいて構築し、2次元空間における数値シミュレーションにより、野生型やtmm, erecta-tripleなどの変異体、もしくはEPF2シグナルペプチド投与に対する応答等、多くの条件における実験結果をうまく再現できた。この結果より、気孔パターン形成は反応拡散パターンで理解できることが示された。 3. 花原基whorlパターン形成: シロイヌナズナにおけるクラスAとクラスC遺伝子発現領域の境界形成に関して、実験的知見に基づいてWUS, AP1, AP2, AG, MIR172等を組み込むことにより数理モデルを構築した。そして一次元空間での数値シミュレーションにより、野生型およびそれぞれの変異体における発現パターンを再現できることを示した。これにより、モデルの基本枠組みの構築を行った。 4. オーキシン極性輸送の形成機構: 植物ホルモンのオーキシンとその輸送体PIN1のダイナミクスにおいて、細胞内に空間構造を組み込んだ数理モデルを構築し、一次元細胞列においてその振舞いを数値シミュレーションにより網羅的に検証した。その結果、このモデルはオーキシン極性輸送やオーキシンスポット形成等のパターンを示し、以前の細胞内オーキシンが一様のモデルに比べ遥かに多様なパターンを形成することが示された。
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