研究領域 | ゲノム・遺伝子相関:新しい遺伝学分野の創成 |
研究課題/領域番号 |
26113701
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
黒岩 麻里 北海道大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (20372261)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 性決定 / 哺乳類 / 進化 |
研究実績の概要 |
日本の固有種であり、南西諸島に生息するアマミトゲネズミ (Tokudaia osimensis) は、哺乳類としては極めて珍しくY染色体を失っており、かつ哺乳類の性決定遺伝子であるSRY遺伝子も消失している。本研究課題では、SRY遺伝子に代わる新たな性決定遺伝子の候補を同定し、トランスジェニックマウスを利用することでその機能を解析することを目的としている。現在までに、アマミトゲネズミオス3個体、オス3個体のゲノムDNAを抽出しライブラリーを作製した後に、次世代シーケンサーにより各個体のゲノム配列の解読を行った。オス個体間、メス個体間、また雌雄間で配列を比較解析し、各性の個体間では共通しているが、オス特異的あるいはメス特異的であると示唆される領域の同定を行った。しかし、検出される領域が膨大でああったため、アマミトゲネズミ配列をマウス配列にマッピングし、マップされなかったリードをアマミトゲネズミ特異的な配列として抽出した。また、新しい性決定遺伝子の候補は、SRY遺伝子が属するSOXファミリーの新規遺伝子である可能性が考えられている。SRYファミリータンパク質は、転写因子として標的DNAに直接的に結合する、DNA結合ドメインであるHMG-box配列をもつ。よって、アマミトゲネズミ特異的なゲノム配列中からHMG-box配列のblast検索を行い、類似した配列の抽出を行った。現在は、性特異的な領域をさらに絞り込み、候補領域の精査を行っている。また、HMG-boxと相同な配列についても選定を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
哺乳類のゲノム配列はゲノムサイズが比較的大きく、配列のアセンブルに時間を有した。
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今後の研究の推進方策 |
今回、雌雄間のゲノム配列を比較した解析により、雌雄差が示唆された領域が同定された。今後は、これら領域のマウスとの相同性を詳細に確認し、より性差がみられる範囲を限定していく。さらに、これらの領域を含むBACクローンをスクリーニングし、配列を決定する。また、すでに抽出されたHMG-box配列と相同性をもつ配列について、解読されたトゲネズミのゲノム配列中にマッピングを行い、性差が示唆された領域に存在するかを確認する。以上の解析により候補配列が確定された後に、マウスの配列情報を利用し、それら領域に含まれる遺伝子のマッピングと、アマミトゲネズミ特異的な配列を絞り込む。以上の解析から得られた候補配列をメスマウスにトランスジェニックし、表現型解析を行うことにより、性決定の機能を有するか確認する。
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