公募研究
イネ品種日本晴における同質倍数性シリーズ(二倍体、三倍体、四倍体)を作成し、それらの個体における様々な形態形質を調査した。まず栄養生長期の形質(草丈、葉齢、葉身幅、葉身長)を測定したところ、系統間で大きな差は見られなかった。一方、生殖生長期ではゲノム量に応じていくつかの形質(節間長、枝梗長、籾数)が変化した。このことから、倍数性の形態形質への影響は生育ステージによって異なることが明らかとなった。また、四倍体ではカルスからの再分化効率が低下しており、器官数やサイズだけでなく細胞運命決定の過程も倍数化によって影響を受けることが明らかとなった。それぞれの倍数体で転写活性が変化するのかを調査する為に、いくつかの組織において核酸比を測定した。核酸比はRNA/DNA比のことであり、細胞の転写量の指標と考えることができる。二倍体、三倍体、四倍体の葉、根、葉原基における核酸比はやや三倍体で高かったものの、系統間で大きな変化は認められなかった。従って、倍数性に依存した転写量の調節機構は存在しない可能性が示唆された。同質倍数体シリーズの網羅的な発現解析を行なうにあたって、二倍体と四倍体のシュートのサンプルを用いて、予備的なマイクロアレイ解析を行なった。栄養生長期は大きな形態変化を伴わないことから、大きな遺伝子発現変動は見られないことが予想されたが、実際は両者で2倍以上有意に発現変動しているプローブが1200個程度見られた。そして発現上昇した遺伝子に対してGO解析を行ったところ、細胞壁の調整に関わる遺伝子が有意に発現上昇していることが明らかとなった。この変動は4倍体の細胞肥大と関連した変動である可能性がある。
3: やや遅れている
マイクロアレイに供する同質倍数体からのサンプリングの結果、三倍性の同質倍数体の出穂期に予想しなかったばらつきが見られたため、予定より多くの試料にサンプリングをする必要が生じた。そのため、当初予定していたマイクロアレイ解析を実施できなかった。
当初の想定よりも大きな個体間、系統間のばらつきを考慮に入れ、多くの同質倍数体シリーズを育成することにより、質の高いマイクロアレイ用のサンプルを入手する。それらのサンプルを用いて同質倍数体間のマイクロアレイ解析を行い、倍数体間で変動する遺伝子のプロファイリングを行なう。
すべて 2014
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件) (うち招待講演 1件)
RICE
巻: 7 ページ: 25
10.1186/s12284-014-0025-2
Plant J.
巻: 78 ページ: 927-936
10.1111/tpj.12517