イネ品種日本晴における同質倍数性シリーズ(二倍体、三倍体、四倍体)に半数体と六倍体を材料に加えて解析を行った。調査した形質(節間長、枝梗長、籾数)はいずれも倍数体間で変化したが、倍数性の増加量と正または負の相関を示す形質はなかった。栄養生長期では倍数体間で大きな変化を示す形質はなかったことから、倍数性の形態形質への影響は形質や発育ステージによって異なることが明らかとなった。また、これらの形態変化の傾向が遺伝的背景によって異なるのかどうかを明らかにする為に、インド稲カサラス、日本稲台中65号の四倍体を用いて表現型解析を行なったところ、日本晴の四倍体と同様な傾向を示した。以上の結果から、本解析で調査した倍数体における形態的な表現型の変化は、遺伝的背景の影響を受けないことが明らかとなった。 倍数体間で表現型に変化が見られた生殖生長期において、二倍体、三倍体、四倍体を用いたマイクロアレイ解析を行なった。発現解析の結果、二倍体と比較して三倍体、四倍体で共通して2倍以上発現上昇している遺伝子は116個、2倍以上発現低下している遺伝子は102個見いだされた。これらの遺伝子群に対してGO解析を行ったが、有意に発現変動している遺伝子の機能カテゴリーは見いだされなかった。しかし、発現上昇した遺伝子群のほぼ半数が機能未知の遺伝子であり、その他の注目すべき遺伝子群として、タンパクのフォールディングやスプライシングに関わる遺伝子群が認められた。スプライシングに関わる遺伝子に関しては、いくつかの遺伝子が栄養生長期においても共通して発現上昇が認められたことから、倍数性と関連した変動である可能性が示唆された。
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