公募研究
魚類や爬虫類や両生類や鳥類では単為発生生物が生まれた報告があるが、哺乳類の単為発生胚は胎盤形成不全により初期胚致死になる。これは父性発現インプリンティング遺伝子の発現欠如によると考えられてきた。申請者は新規父性発現インプリンティング遺伝子 Peg10 (Paternally Expressed Gene 10) を単離し、Peg10 がレトロトランスポゾン由来の遺伝子でありながら、哺乳類の初期胎盤形成に必須な機能を持つ、すなわちPeg10の発現欠如により単為発生胚が致死になることを明らかにした。(Nature Genetics 38(1):101-6 2006)最近の研究結果より、Peg10 KO マウスの胎盤では、本来抑制されている免疫反応によって発現誘導される遺伝子群が活性化しており、すなわち、Peg10が胎盤で母子間免疫寛容に機能している可能性を明らかにした。(論文未発表)これは、哺乳類がレトロトランスポゾンであったPeg10のレトロウィルスなどが持つ宿主免疫を抑制する機能を利用し、母子間免疫を抑制することで胎生機構を獲得したと考えられる。本研究は、Peg10の胎盤での詳細な機能解明を行うことで得られる結果を起点として、いかにして我々哺乳類が母子間免疫寛容機構というシステムを構築して、母子間免疫拒絶という大きな障壁を乗り越えて胎生機構を進化させたのかを解明することを目的としている研究である。
2: おおむね順調に進展している
解析に用いる遺伝子組み換えマウス同士の交配を行い、サンプルを採取できたので、研究計画はおおむね順調に進展している。
研究の遂行に必要なサンプルは既に得られているので、これらのサンプルの遺伝子発現解析等を行うことで、母子間免疫寛容機構の解明を行う予定である。
すべて 2014
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (1件)
Development
巻: 141 ページ: 4763-4771
10.1242/dev.114520.