公募研究
生物の存続は環境への適応に依存する。変動する環境に順応すること、配偶体の数や大きさを適切に制御すること、また雌にとっては受け入れる雄ゲノムを選別することは、生物個体が生存し次世代を残すにあたり重要な課題である。本研究では、複雑なゲノム構造を持つ異質倍数体植物の環境応答可塑性の遺伝的基盤を明らかにする。また、様々な生物の配偶体発生に関わる遺伝子を明らかにし、動植物に共通される傾向とそれぞれの分子機構の理解を目指している。<1.両親ゲノムがもたらす異質倍数体種の水環境適応に関する可塑性の遺伝的基盤の解明>異なる水環境に生育する両親種の出会いにより生じた異質倍数体種が幅広い環境に適応する際に、両親種由来のゲノムのどのような相関により発生学的特徴・遺伝子変化がもたらされたか、アブラナ科の異質倍数体植物Cardamine flexuosa やミヤマハタザオ・タチスズシロソウと、これを再現した人工倍数体を用いてその遺伝的基盤を解析した。環境が変化した際にホメオログ館の発現比が大きく変化する遺伝子を見出した。<2.親ゲノムによる配偶体への資源投資制御に関わる新規遺伝子の同定>ゲノムワイド関連解析(GWAS)によりシロイヌナズナの花粉(♂配偶体)数決定に関わる候補遺伝子を同定した。<3.受精過程における新規雌雄ゲノム間相互作用をもたらす因子の同定>共同研究により、めしべ柱頭(♀胞子体)で発現する分泌タンパク質を多数同定することに成功した。
2: おおむね順調に進展している
C. flexuosaはC. amaraとC. hirsutaを両親種とする異質倍数体種である。生育環境が変化した際に、C. amara由来の遺伝子、またはC. hirsuta由来の遺伝子で発現比が変わる遺伝子を見出した。これらの遺伝子は、植物が環境に応じて遺伝子を使い分けている可能性を示唆している。このような遺伝子が報告された例はほとんどなく、この成果によりゲノムの進化と環境応答との関わりについて突破口が開けると期待される。
1.今回見出した発現比が変化する遺伝子について、発現部位や機能を明らかにする。2.ゲノムワイド関連解析(GWAS)によりシロイヌナズナの花粉数決定に関わる候補遺伝子を同定できたので、その遺伝子の機能を明らかにする。3.共同研究により、めしべ柱頭で発現する分泌タンパク質が受精に果たす役割を明らかにする。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (3件) (うちオープンアクセス 3件、 謝辞記載あり 3件、 査読あり 2件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 2件) 図書 (3件)
Plant Signaling Behavior
巻: 0 ページ: 0-0
10.4161/15592324.2014.989050
Functional Ecology
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10.1111/1365-2435.12165
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