公募研究
被子植物であるシロイヌナズナにおいて、父母因子の制御下で胚発生を担うしくみを理解するべく、父母の両方から受精卵に持ち込まれて体軸形成を制御するWRKY2転写因子と父親(精細胞)からのみ持ち込まれる偽キナーゼであるSSP、母親(卵細胞)のみに由来するPOZ転写因子の三者に着目して研究をおこなった。それぞれの相互作用を詳細に判定するとともに、各因子の変異体や機能改変株を用いて精査した結果、これらが協調的に働くことで、下流の特異的な転写因子カスケードが活性化され、初期胚の体軸が形成されることが明らかになった(投稿準備中)。また、これら父母因子の協働により、具体的に体軸形成のどの局面が制御されるかを突き止めるべく、受精卵が極性化する過程や体軸に沿った胚のパターン形成をライブイメージングする系を立ち上げた(Maruyama et. al., 2015; Gooh et. al., 2015; 投稿準備中)。この系により、受精卵が極性化して非対称分裂に至る動態(頂端-基部軸の確立)や、胚内部の各部位が異なる発生運命を獲得する過程(体軸に沿ったパターン形成)の可視化に成功し、父母の協働が損なわれた変異体を用いてライブイメージングしたことで、各時期におけるどのイベントが特異的に損なわれるのかを特定できつつある。
1: 当初の計画以上に進展している
当初の計画でも、受精卵の極性化や胚のパターン形成をライブイメージングする予定であったが、それらは特定方向への細胞伸長や細胞分裂パターンの可視化を想定したものであり、細胞内部のオルガネラの動態変化や、発現遺伝子の変化といった詳細については、固定サンプルを用いた超解像度顕微鏡による観察など、ライブイメージングとは別の解析手法によっておこなうつもりであった。しかしながら、顕微鏡システムなどを最適化したことで、オルガネラの形態変化や遺伝子発現の推移などもライブイメージングできる系を確立できたことにより、解析の精度が飛躍的に上昇し、個々の遺伝子機能の理解も進んだ。
これまでの解析結果によって、父母因子の協働の下流で制御される発生イベントが特定されつつあるので、そのメカニズムをさらに精査するべく、第二弾となるマーカー株を作成中である。今後はこれらのマーカー株や、父母因子との関係がいまだ知られていない発生制御因子も解析することで、父母因子の協働が植物の体軸獲得とパターン形成を担うしくみをより詳細に解明していく。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件)
Cell
巻: 161 ページ: 907-918
10.1016/j.cell.2015.03.018.
Developmental Cell
巻: 34 ページ: 242-251
10.1016/j.devcel.2015.06.008