公募研究
本研究は、未同定の有性化因子の刺激でプラナリア無性個体に雌雄同体性の生殖器官を誘導する有性化系を用いて、1.有性化を引き起こすWnt分子の同定、2.有性化制御因子の同定、3.FGF-Wntシグナル経路で働く有性化因子の同定を目指している。1.有性化を引き起こすWnt分子の同定:実験動物プラナリアDugesia ryukyuensisのWnt遺伝子を9種クローニングした。これらのWnt遺伝子について有性化過程における発現解析を行い、生殖巣や生殖器官に発現しているWnt遺伝子を3種決定した。そのうちの1種は、無性個体に対してRNAi法による遺伝子ノックダウン(b-カテニン2遺伝子とのダブルノックダウン)で部分的な有性化を引き起こすことができた。2.有性化制御因子の同定:RNA-seq解析により候補遺伝子を絞りこむ。RNA-seq解析のためのcDNAライブラリを作成した。3.FGF-Wntシグナル経路で働く有性化因子の同定:プラナリアFGF関連遺伝子NDKがコードするタンパク受容体のコアゴニストとして働く有性化因子の存在を予想している。免疫沈降用のNDKリコンビナントを認識する抗体を作成した。一方で、有性化因子がプラナリア特有の生殖器官である卵黄腺に含まれているという発見から、卵黄腺に特異的あるいは多量に含まれている低分子化合物をメタボローム解析で約20種同定した。これらの化合物の中から6種を無性個体に給餌したところ、4種に部分的有性化活性が認められた。これらは今後、NDKのコアゴニストとして働くか検証される。
3: やや遅れている
研究項目1と3はおおむね順調に進んでいるが、研究項目2が遅れている。研究項目2はRNA-seq解析の分析を外部委託しているが、研究打ち合わせの段階で当初考えていた比較サンプル数では、目的を達成できない可能性があることがわかった。そのため、cDNAライブラリ作成に時間がかかっている状態であるため。
1.有性化を引き起こすWnt分子の同定:候補遺伝子として絞り込んだ3種のWnt遺伝子とb-カテニン2遺伝子の4種の遺伝子ノックダウンのどの組み合わせで、無性個体に有性化を引き起こせるかを検証する。2.有性化制御因子の同定:解析に必要なcDNAライブラリをすべて完成させて、RNA-seq解析により候補遺伝子を絞りこむ。候補遺伝子は遺伝子ノックダウンで有性化に関与するかを検証する。3.FGF-Wntシグナル経路で働く有性化因子の同定:NDKリコンビナントと特異的に結合する化合物を有性化活性を持つ精製画分から昨年度作成した抗体を用いて免沈法で単離する。構造決定は質量分析やNMRで行う。メタボローム解析から得られた候補化合物に関してもNDKのコアゴニストとして働くか検証する。
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Mechanisms of Development
巻: 132 ページ: 69-78
doi:10.1016/j.mod.2013.12.003