公募研究
平成26年度は、ヘアピンRNA(shRNA)によるRNAiノックダウンを利用したスクリーニングとGFP融合タンパク質を特異的に分解することの出来るdeGradFPシステム(Caussinus et al. 2012)を用いて極細胞特異的に遺伝子ノックダウンする実験系の開発を行った。まず、RNAiスクリーニングについては、卵形成過程で発現するGal4系統をUAS-GFPを用いて発現開始時期を検討した結果、有効なGAL4系統を選出した。次に、Perrimon研で検討されたshRNA系統(Yan et al. 2014)から、生殖細胞発生への影響が期待できる約200系統についてパイロットスクリーニングを行った。その結果、体細胞は細胞化するが生殖細胞が形成されないものや生殖細胞が胚発生過程で散在する等の異常を示す系統が存在し、本スクリーニングが目的の新規遺伝子を得るために有効な手法であることが期待された。また、deGradFPシステムについて、極細胞で一過的かつ特異的に翻訳されるpgc遺伝子制御領域にGFPユビキチン化タンパク質であるNSlmb-vhhGFP4を繋いだコンストラクトを作成し、トランスジェニック系統を作出した。胚全域で発現するHistone2AV-GFPや生殖細胞特異的に発現するGFP-Vasaを用いて検討した結果、生殖細胞特異的にGFP融合タンパク質をノックダウンすることと確認した。さらに、CRISPR/Cas9システムを用いてGFP遺伝子をゲノムの標的部位に正確にノックインする手法についても開発を試みた結果、効率は標的により異なるが、実際の研究レベルで使用に耐えうるレベルで遺伝子ノックイン系統を作出可能となった。現在までに、7つの遺伝子座についてGFPノックイン系統の作出に成功した。
2: おおむね順調に進展している
本研究プロジェクトの第1の関門であるスクリーニングを行うための実験系の構築については、概ね予定通りに進行し、実験系の基盤については構築できたと考えている。今後は、実際にスクリーニングを進め、当初の目標である生殖細胞の形成・分化に関わる新規遺伝子の同定を目指したい。
shRNAを用いたRNAiスクリーニングについては、RNAi効率を引き上げることが期待されるUAS-Dcr1の共発現系も検討する予定である。そして、2000系統程度について本スクリーニングを行い、新規因子の同定を目指す。deGradFPシステムについては、GFP融合タンパク質を発現するノックイン系統の作出を進め、生殖細胞特異的ノックダウンの影響を解析していく。また、遺伝子産物のノックダウン効率をさらに上げるために、pgc以外の制御配列を用いて、GFPユビキチン化タンパク質であるNSlmb-vhhGFP4の発現を制御する系統の作出をおこなっていきたい。具体的には、smaugの5'領域に卵形成過程でのmRNA翻訳をブロックする配列が存在することが期待出来るので、smaugの5'領域、生殖質への局在かシグナルを持つnanosの3'領域とのハイブリッドにより、NSlmb-vhhGFP4の発現を卵形成過程でブロックしつつ、胚発生過程において生殖細胞で高発現する系統の作出が期待される。
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PLoS Genetics
巻: 11 ページ: e1004992
10.1371/journal.pgen.1004992
http://www.imeg.kumamoto-u.ac.jp/divisions/germline_development/index.html