研究領域 | 動物における配偶子産生システムの制御 |
研究課題/領域番号 |
26114512
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研究機関 | 国立遺伝学研究所 |
研究代表者 |
加藤 譲 国立遺伝学研究所, 系統生物研究センター, 助教 (60570249)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | マウス / 卵形成 / RNA制御 |
研究実績の概要 |
本研究は継続的なマウス卵形成機構を明らかにすることを目指し、これまで着目されていなかったRNA結合タンパク質による転写後制御の視点から原始卵胞の維持と活性化の分子機構を明らかにすることを目的として、以下の研究を行った。 1) 卵形成過程におけるRNA結合タンパク質Aの機能解析:遺伝子Aは卵巣において卵細胞特異的に発現する。興味深いことに、遺伝子Aの発現レベルは卵胞の成長に応じて上昇していた。そこで、我々は卵胞の活性化に遺伝子Aが関与するとの作業仮説を立て、遺伝子Aの卵細胞特異的変異体を作成し、卵巣における表現型を解析した。その結果、全ての卵細胞が死滅したことから、遺伝子Aは卵胞の生存に必須の遺伝子であることが明らかとなった。しかし、本来の目的である卵胞の活性化への寄与については条件的変異体であは検証できなかったことから、卵細胞特異的に遺伝子Aを過剰発現するトランスジェニックマウスを作成した。現在このトランスジェニックマウスを解析中である。 2) 遺伝子Aと拮抗するアンタゴニストの探索:もし遺伝子Aが卵胞の活性化に寄与するなら、継続的かつ秩序立った卵胞活性化を実現するためには原始卵胞において遺伝子Aに対し拮抗的に働く遺伝子Bの存在を仮定することが可能である。そこで、卵巣を用いたマイクロアレイ解析を行い、候補遺伝子のスクリーニングを行った。スクリーニングで得られた遺伝子(RNA結合タンパク質をコードする遺伝子)のうちの1つに着目し、発現解析を行ったところ、原始卵胞において強い発現が見られたことから、この遺伝子BはAに対する有力なアンタゴニストの候補と考えられた。この可能性を検証するため、遺伝子B過剰発現マウス、CRISPRによる変異体作成を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の目的である卵胞維持と活性化に対する遺伝子Aの関与を遺伝学的に解析した。結果として、卵胞が死滅してしまったことから、この実験では目的を果たすことができなかったものの、遺伝子Aの過剰発現解析においてプレリミナリーながら、遺伝子Aの卵胞活性化の関与をうかがわせる結果が得られている。また、遺伝子A変異体を用いた網羅的な発現解析、遺伝子Aに結合するRNAの網羅的同定を行い、現在更に解析を進めている。一方、当初予定していなかった遺伝子Aに対するアンタゴニストの探索を行い、有力な候補遺伝子Bを得たことから、今後更に研究の発展が見込まれる。
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今後の研究の推進方策 |
遺伝子Aの過剰発現解析を進め、遺伝子Aの卵胞活性への関与を明らかにする。そのため、組織学的解析に加え、卵巣の器官培養や、卵胞活性化抑制因子の条件的変異体等を用いてより詳細に解析を行う。その上で、遺伝子BのAに対する拮抗作用を遺伝学的(過剰発現、変異体)また、培養細胞を用いた実験により証明することを目指し、作用の反するRNA結合タンパク質による卵胞の維持と活性化の分子機構を明らかにすることを目指す。更に、これらの遺伝子によって制御される下流遺伝子の同定を試みる。
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