研究領域 | 多様性から明らかにする記憶ダイナミズムの共通原理 |
研究課題/領域番号 |
26115501
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
細川 貴之 東北大学, 生命科学研究科, 助教 (30415533)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | サル / 前頭連合野 / 下側頭皮質 / ニューロン / 記憶 |
研究実績の概要 |
本研究では、機能的カテゴリ(はたらきや用途の類似性に基づくカテゴリ分け)の記憶が形成、利用、再編される過程の神経細胞活動を調べることで、カテゴリ記憶に関係する神経機構のダイナミズムを解明することを目指している。 平成26年度は主に2頭のサルに行動課題を訓練した。行動課題は視覚刺激と結果を連合させる記憶課題で、見た目が異なる視覚刺激4枚を1グループとして2グループ(計8枚)の刺激セットを作り、各刺激グループと特定の結果(ジュースまたは食塩水)の連合学習をサルに行わせた。学習訓練が進むにつれ、ジュースと連合している視覚刺激が提示されたときは飲み口をなめるようになったのに対し、食塩水と連合している視覚刺激が提示されたときはそのような行動を抑えるようになった。特定の刺激セットに対して、2頭のサルとも刺激と結果の関係を学習し終えた。その後、それまでジュース(食塩水)を予告していた刺激グループが今度は食塩水(ジュース)を予告するようになるというように、刺激と結果の関係を入れ替える逆転学習を導入した。さらに、刺激と結果の関係を学習する過程で神経活動がどのように変化するかを調べるため、毎日、新しい刺激セットを導入し、その日のうちに連合学習が形成されるようになるまで訓練を行った。1頭のサルは、新しい刺激を導入しても、数十トライアルのうちに刺激と結果の関係を学習し、その逆転学習もできる段階まで訓練が進んだ。しかし、2月の終わりに訓練した1頭のサルが死亡してしまう事故が起きてしまった。 今後は、早急に新たなサルを購入し、訓練を開始する。また、残っているサルについては引き続き、行動訓練を進めるとともに、訓練が完了次第、神経活動の記録を開始したいと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
サル2頭を用い、行動課題を訓練した。1頭のサルについては、新しい刺激を導入しても数十トライアルのうちに刺激と結果の連合学習が成立し、逆転学習もできる段階まで訓練が進んだため、神経細胞活動を記録するための手術を予定していた。しかし、そのサルが不慮の事故により死亡してしまったため、当初の計画より遅れることとなった。もう一頭のサルについては現在、訓練は8割くらい完了しており、訓練が完了次第、神経細胞活動の記録を開始する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
新たなサルを購入し、訓練を開始する。残っているサルについても訓練を引き続き行い、訓練が完了したら、頭部に神経活動記録用のチェンバーを取り付ける手術を行う。実験計画書では、前頭連合野と下側頭皮質から金属電極を用いて、神経細胞活動を記録することを予定していた。しかし、下側頭皮質は脳の深い位置にあり、毎日、金属電極を挿入した場合、脳にダメージを与え、不慮の事故が起こるリスクも高い。また、下側頭皮質は広い領域であり、そのどこが本研究の記憶課題に関係しているのか分からない。そこで、まずは一方の大脳半球において金属電極ではなく、シート状の電極(ECoG)を用いて広範囲に神経活動を記録し、課題に関係している部位を探す。その結果に基づいて、もう一方の大脳半球において金属電極を用いた神経細胞活動記録を行う予定である。
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