研究実績の概要 |
本年度、成体脳の新生ニューロンの記憶回路への統合過程における睡眠の役割りを検討した。まず、新生ニューロンにマウス遺伝学(pNestin-CreERT2 x CAG-LSL-Halo/Ch rhodopsine)を用いて、光受容体を選択的に発現させた。次に、このマウスの海馬歯状回に光ファイバーおよび脳波・筋電図記録電極を移植した。そしてさらに、新生ニューロンがその記憶回路へ統合されることが分かっている記憶学習課題(Contextual Fear Conditioning)を与えた(Arruda-Carvalho M*,Sakaguchi M* et al.,J. Neurosci.,2011,v31p15113,*equally contributed)。この学習課題直後より、脳波・筋電図をモニターすることで、睡眠のステージ判定をリアルタイムで行いながら、特定の睡眠ステージのみにおいて光照射を行った。この際に、睡眠ステージの自動判定システムと光照射の同期システムを開発した(KISSEI COMTEC社、BIOTEX社との共同開発)。これにより、ハイスループットに、新生ニューロンの興奮を各睡眠ステージ特異的に操作することができる。次に、記憶テストを行うことで、学習後の睡眠ステージ選択的な新生ニューロンの興奮制御が、記憶の固定化および睡眠の構築にどのような影響を与えるかについて検討した。驚くべきことに、睡眠ステージ特異的な制御によって、記憶の固定化に強い影響がでることを見出した。
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