研究領域 | 多様性から明らかにする記憶ダイナミズムの共通原理 |
研究課題/領域番号 |
26115505
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
殿城 亜矢子 千葉大学, 薬学研究科(研究院), 助教 (90645425)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 老化 / 記憶 / 代謝 / インスリン / ショウジョウバエ / 遺伝学 |
研究実績の概要 |
学習や記憶機能は、加齢にともなって低下します。近年、加齢に伴う生体内の代謝機能の変化が記憶低下の一因となることが示唆されていますが、その機構は明らかではありません。私たちは、加齢にともなう生体内の代謝機能の低下が記憶機能に与える影響を明らかにして、加齢性記憶低下の原因を理解することを目指しています。 記憶の形成機構やインスリンシグナルによる代謝制御機構は種を超えて保存されています。本研究では、ショウジョウバエの嗅覚記憶をモデル系として用いて、老化による代謝機構の低下を環境的あるいは遺伝学的に操作して、記憶形成に関与する神経・分子ネットワークに与える影響を評価します。 1. 生体内の代謝機能の変化が記憶形成に与える影響の解明:本年度は、生体内の代謝を遺伝学的操作により一過的・強制的に低下させたトランスジェニックショウジョウバエ個体を作製し、それらを用いてハエ嗅覚学習後の記憶を行動解析により測定した。学習の程度は変化しないが、記憶の維持が低下していたことから、生体内の代謝機能は記憶の維持に必要であることが明らかとなった。
2. 加齢にともなう代謝恒常性の変化が記憶機能の低下に与える影響の解析:加齢にともなう代謝機能の低下を遺伝学的に操作する方法を探索するために、ハエの代謝機能の指標を加齢依存的に測定したところ、インスリンペプチドの発現量が変化することが明らかとなった。現在、それらをターゲットとして加齢に伴う代謝恒常性を変化させる遺伝学的方法を探索している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書に記載した内容に関しては、ほぼ全て順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
1) 生体内の代謝恒常性の変化が影響する嗅覚記憶神経系の同定 生体内の代謝機能を変化させた個体において、記憶維持低下の原因となる嗅覚神経系を同定する。 2) 生体内の代謝恒常性の変化が影響する分子ネットワークの同定 生体内の代謝変化によって、脳内あるいは特定の神経細胞群の遺伝子プロファイリングが変化している可能性を考え、発現変化する分子ネットワークをRNA-seqを用いたトランスクリプトーム解析により同定する。同定した分子ネットワークの発現量を改変させた老齢個体において、嗅覚記憶を行動解析により測定する。
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