公募研究
これまでに私たちはメダカは個体認知に基づく高度な社会性を持つことを発見した。例えば、メスの配偶者選択の際に「新規に出現したオス」と「見知ったオス」を識別して、後者の求愛を受け入れる現象(Science,2014)や、集団採餌の際に、餌場情報を記憶した学習個体を、未学習の個体が認知して追従することで採餌効率が上がる現象(PLoS One, 2013)を発見した。本年度はメスの配偶者選択に異常が生じる変異体をスクリーニングした結果、新たに2種類の変異体を同定することに成功した。一つの変異体の原因遺伝子はペプチドホルモンをコードしており、「新規に出現したオス」と「見知ったオス」の両方をすぐに受け入れる表現形を示す。さらに当該ペプチドホルモン受容体をコードする遺伝子変異体も同様の表現形を示すことも見出した。また当該ペプチドホルモン受容体遺伝子を発現するニューロンの形態や神経活動を可視化する目的で、当該遺伝子プロモーターの単離にも成功した。もう一つの変異体の原因遺伝子はbHTH型のDNA結合型転写因子をコードしており、「新規に出現したオス」と「見知ったオス」の両方を拒絶する表現形を示す。また視覚刺激に対して野生型と比較して、過剰に逃避行動を示す傾向が見つかった。当該転写因子は性行動に関わると予想される視索前野及び終脳の一部などに発現していることを見出した。
1: 当初の計画以上に進展している
研究開始当初は、すでに同定していたメスの配偶者選択に異常が生じる変異体(GnRH3変異体)の解析を中心に進める予定であったが、本年度は新たに2種類の変異体を同定することに成功した。新たに同定した原因遺伝子(ペプチドホルモン及び転写因子をコード)の脳内での発現様式も同定できたことから、これらの原因遺伝子発現ニューロン群とGnRH3発現ニューロン群との間のネットワークを解析することで、研究目的の達成が可能になった。
行動異常の原因遺伝子(ペプチドホルモン受容体及び転写因子)プロモーターの下流にカルシウムインジケーターまたは神経毒素をつなげたコンストラクトを作成して、遺伝子導入個体を作製する。これにより、当該遺伝子を発現するニューロンの神経活動と行動との関連を解析する。また筋肉麻酔して固定したメダカに様々な社会刺激(同種個体、見知った(視覚記憶した)個体、異性・同性)を提示する実験装置の開発を行い、二光子DSLMを用いて、広範囲の脳領域を同時にイメージングする
すべて 2015 2014 その他
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (8件) (うち招待講演 1件) 図書 (1件) 備考 (1件)
PLOS GENETICS
巻: 11 ページ: e1005009
10.1371/journal.pgen.1005009
PLOS ONE
巻: 9 ページ: e112527
10.1371/journal.pone.0112527
https://www.s.u-tokyo.ac.jp/ja/press/4154/