研究領域 | 多様性から明らかにする記憶ダイナミズムの共通原理 |
研究課題/領域番号 |
26115518
|
研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
美津島 大 山口大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (70264603)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | AMPA受容体 / GABAA受容体 / 学習 / エピソード記憶 / シナプス可塑性 / θ波 |
研究実績の概要 |
海馬には、その個体の位置情報や時間情報などが入るが、エピソードの符号化メカニズムは不明である。雄性ラットに異なるエピソードを体験させ、エピソード学習が、海馬CA1ニューロンの自発発火活動に及ぼす影響についてリアルタイムで検討した。 十分に馴らしたホームケージ内では散発的な発火活動が見られたが、強い情動を伴うエピソード学習中や学習直後に600~1200ms継続する高頻度発火活動(43~129Hz)が多くの個体で発生し、その数分後から短期(30~100ms)のリップル状高頻度発火が挿入され始めた。さらにエピソード曝露30分後に急性海馬スライスを作成し、興奮性と抑制性のシナプス可塑性を解析した結果、興奮性と抑制性のシナプスが多様に強化され、個々のCA1ニューロンは多様で異なるシナプス入力を保持した。また、興奮性シナプスと抑制性シナプスの可塑性はエピソード曝露後5分以内に見られることも判明した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
効率を上げるため、海馬発火活動の取得システム更新に努めた。結果、海馬θ波と発火活動を同時記録することが可能になった。本研究から1)海馬θ波とリップル波の位相関係を明らかにした上で、2)学習によるリップル波が開始される位相と終了する位相の変化、3)リップル波のduration (ms) 4)θ波の山のうち何%がリップル波を伴うか、そのSuccess rate(%)を明らかにした。さらに、リップル波は複数のCA1ニューロンが同期して形成されていることが判ったため、5)学習前後におけるリップル波の貢献ニューロン数、6)学習前後のリップル波周波数についても解析中である。
|
今後の研究の推進方策 |
エピソード学習後には、様々な形態を持つ多様なリップル波が観察された。リップル波の多様性について、数値化と分類を試み、エピソード学習後の出現頻度をプロットして頻度解析を進める。異なるエピソード学習後に発現する各リップル波の頻度分布の違いを抽出し、脳内暗号の解読を進める。また、Western Blot法を用いて海馬CA1領域におけるAMPA受容体のリン酸化を確認する。さらにThy1-YFPトランスジェニックマウスを用いて海馬CA1ニューロンとスパインを可視化し、エピソード学習が興奮性シナプスや抑制性シナプスの可塑性に及ぼす影響を検討する。方法としては学習群と非学習群の脳組織標本を免疫組織染色し、共焦点レーザー顕微鏡や透過型電子顕微鏡を用いて解析する。
|