公募研究
海馬には時間や空間の情報が入りエピソード記憶の形成に中心的役割を担う。記憶の符号化ルールは不明だが、海馬CA1ニューロンにおけるAMPA受容体の興奮性シナプスへの移行は、阻止すると回避学習が成立せず、学習成立に必要な現象である(Mitsushima et al, PNAS 2011)。回避学習はAMPA受容体を介する興奮性シナプスの可塑性だけでなく、GABAA受容体を介した抑制性シナプスの可塑性も高める結果、個々のCA1ニューロンが複雑かつ多様なシナプス入力を保持することが解った。また、薬物で興奮性シナプスの多様性や抑制性シナプスの多様性を失わせると、学習が成立しないため、多様なシナプス可塑性がCA1ニューロンの記憶痕跡であることも判明した(Mitsushima et al, Nat Commun 2013)。本研究では、オスラットに10分間の様々なエピソード体験させ、CA1の多ニューロン発火活動に及ぼす影響を、自由行動状態で解析した。十分馴らしたホームケージ内では散発的な自発発火活動が見られたが、拘束ストレスやメスラットとの接触など強い情動を伴うエピソード学習中もしくは学習直後に600~1200ms継続する自発的高頻度発火活動(43~129Hz)が何度も発生し、その数分後からリップル状(30~100ms)短期高頻度発火の挿入が始まった。エピソード学習後のリップル波は形状や周波数が多種多様で複雑な多様性を示し、Field potentialとの同時記録実験ではθ波とリップル波の位相関係はエピソード学習後に変化した。さらにエピソード曝露30分後に急性海馬スライスを作成し、興奮性シナプスと抑制性シナプスの可塑性を解析すると、興奮性と抑制性のシナプスが多様に強化され、各ニューロンが示すシナプス入力状況はエピソード間で異なった(石川、美津島 日本生理学会 2016)。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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