公募研究
今年度は、メモリープライミングの分子的な実体の解明に進展が見られた。これまでメモリープライミングを引き起こすT3の下流には、神経細胞棘突起内のアクチンの重合状態の変化があることを見出していたが、この変化を定量的に検出する系を確立した。この技術を確立することによって、記憶と神経微細構造の細胞骨格の変化を定量的かつ継時的に調べることが可能になると期待される。方法は、繊維状アクチンと特異的に結合するペプチドを脳内神経細胞にウイルスを用いて遺伝子導入して発現させ、刷り込み学習によって、棘突起内の繊維状アクチン量がどのように変動するかを解析した。この系を利用した結果、刷り込み学習のトレーニングによる繊維状アクチンの増加とT3による減少効果が拮抗することを明らかにした。すなわち刷り込みが起こる際には、アクチン重合と脱重合が一過的に激しくなり、記憶が成立すると元の定常状態に戻ることが明らかになった。この一過的なアクチン重合の変化の間で、記憶成立に重要な生化学的反応が起こっていることが考えられる。T3の受容体は細胞内に存在し、T3と結合すると他の遺伝子発現に関与するとともに、非遺伝子的な作用によって刷り込み記憶の成立に必要な反応をもたらし、神経微細構造内のアクチン骨格に変化をもたらすと考えられる。これまで学習記憶依存のアクチン骨格の変動の報告はいくつかあるが、本研究のように学習能力を与えるホルモンの作用と、学習トレーニングとを組み合わせた解析は初めてであり意義深い。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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