研究領域 | 多様性から明らかにする記憶ダイナミズムの共通原理 |
研究課題/領域番号 |
26115524
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研究機関 | 東邦大学 |
研究代表者 |
古田 寿昭 東邦大学, 理学部, 教授 (90231571)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 化学プローブ / ケージド化合物 / 記憶 / 細胞内シグナル伝達 |
研究実績の概要 |
光で記憶を操作可能にする新規ケミカルプローブの開発を目的に研究を行っている。セカンドメッセンジャーおよび各種酵素阻害剤のケージド化合物を新たに開発し,モデル生物個体脳において,任意の細胞内シグナル伝達経路を自在に制御する新手法開発に展開することを目指した。この目的のために,狙った細胞内だけで光活性化能を獲得する新規ケージド化合物を開発した。すなわち,光分解性保護基にさらに別の鍵を掛けることで,その光感受性を改変して光活性化できない状態にロックしておく。そのロックを,特定の酵素に反応して開くように設計しておけば,その酵素(第一の鍵)を発現している細胞内だけで光活性化能を獲得し,光照射(第二の鍵)によって機能を発現できるようになる。第一の鍵として2種類の異なる酵素を選び,それぞれに対応して光活性化能を獲得する新規光分解性保護基を設計・合成した。セカンドメッセンジャー,レセプターのアゴニスト,酵素阻害剤等のケージド化合物合成に応用し,光反応性,暗所での安定性,および,第一の鍵である酵素との反応性を明らかにした。 特定の神経細胞のはたらきをマイクロ秒以内の時間分解能で光活性化または光機能阻害できるような,新しいケージド神経伝達物質の開発を目指した。これを実現するために,既存のタグ‐プローブシステムと我々が開発したモジュール型ケージド化合物を組み合わせた。その結果,狙った神経細胞表面に特異的に発現したタグタンパク質を認識・結合するような,新規ケージド神経伝達物質を設計・合成することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り,狙った細胞内だけで光活性化されることが期待される,ケージドセカンドメッセンジャー数種類,およびケージドアゴニストの合成を達成した。これらによって,cAMP,DAG, およびCa2+が関与する細胞内シグナルを,細胞種選択的に,しかも高い時間分解能で光制御可能になると期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き,第一の鍵に設定した酵素存在下で活性化能を獲得する分子の合成を進めて,モデル生物脳の記憶操作を可能にする化学プローブのレパートリーを増やす。並行して,合成と化学的および物理的性質の検討が完了した化合物は,第一の鍵である酵素を一過的に発現した哺乳動物細胞内だけで,光活性化能等の機能を獲得することを確認する。さらに,モデル生物個体でも同様に使用可能かを明らかにするため,同種の酵素を特定の神経細胞に発現しているショウジョウバエ単離脳を用いて,細胞種選択的光活性化が可能であることを示す。
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